日本では知らない人がいないナショナルブランドでも海外で同様の認知を獲得できているとは限らない。訪日需要をつかむためANAが展開するグローバルマーケティング施策について、担当者に話を聞いた。
全日本空輸(以下、ANA)は、言わずと知れた日本の航空会社だ。日本航空(JAL)と並ぶ2大ブランドとして日本でその存在を知らない人はたぶん、ほとんどいない。
しかし、海外ではやや事情が異なる。同社が定期的に実施している独自調査によると、ANAの認知度は国内では95%を超えるが、海外ではそこまで名前が知られているわけではない。国によっては認知度が国内の半分以下にとどまることさえある。海外でのブランド認知向上は大きな課題であり、そこで鍵になるのが大きなリーチを持つInstagramやFacebookの活用だ。ANAでグローバルマーケティングに携わる平口晶子氏(マーケティング室宣伝部)に、現状の取り組みについて聞いた。
ANAの海外向けSNS広告の配信はエリア別にプロモーションの年間計画を立て、社内で運用している。
「メディアプラン全体のバランスの中でテレビやデジタル配信に加え、SNS広告も活用していますが、ここ1年ほどはInstagram広告が必ずプランの中に入るようになっています」(平口氏)
広告用のコンテンツは大半が動画だ。バナー広告より情報量を多く詰め込める動画広告は、ブランドストーリーを伝える上で有効な表現形態と考えているからだ。
ターゲットは主に北米の「裕福なミレニアル層(Affluent Millennial)」。北米路線は長距離であるため単価が高い。その上、日本を経由してアジア諸国へ向かう三国間流動需要もあって、高い収益貢献が見込める。ミレニアル層つまり25歳から34歳の男女を主要な顧客像と想定するのは日本と同じだが、ビジネスや個人旅行で日本、またはアジアへ渡航する人となると、ターゲットは必然的に富裕層に絞られる。
彼らに対して動画広告で興味を喚起してコンテンツサイトに誘導するのだが、国内向けのコンテンツが具体的な機内仕様やサービス、新規路線就航などをフックにすることが多いのに対して、海外向けは日本の魅力やスポーツコンテンツなどと連動させて訴求する工夫をしている。誘導先のコンテンツページでもチケット購入を急かすようなことはしない。
「動画広告を配信するターゲットは、弊社のWebサイトに訪問したことがない非接触者。明日日本に行こうと思っているわけでもない人をいきなり空席照会に誘導してチケットを押し売りしても、購入にはつながりません。」と平口氏は語る。「日本は面白い」「日本に行きたい」と思わせた上で初めて購入を促すというステップを大事にしているのだ。
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