RIZAPのマーケティングオートメーション活用、CX改善で一人一人の結果にコミットする「Marketo Engage」を導入(1/2 ページ)

RIZAPが「Marketo Engage」を使って実現しようとしていることとは何か。

» 2019年07月31日 12時00分 公開
[冨永裕子ITmedia マーケティング]

 RIZAPという名を聞いて多くの人が思い浮かべるのは、「結果にコミットする」の広告コピーと著名人の「使用前・使用後」のインパクトあるビジュアル差、そしてそれを実現するための厳しい食事制限ときついトレーニングといったところではないか。

 だが、そこには大きな誤解がある。良質なCX(顧客体験)なしにダイエットを継続させることはできない。また、美容痩身の枠を超えて事業を成長させる上で、CXはより重要になってくる。

 本稿では2019年7月24日の「Adobe Symposium 2019」に登壇したRIZAPマーケティング戦略本部CX戦略部部長の澤本陽介氏の講演から、「Adobe Experience Cloud」製品群の「Marketo Engage」を導入したRIZAPのCX向上の取り組みについて紹介する。

RIZAPの澤本陽介氏

ブロッコリーと鶏ささ身しか食べられないというのは誤解

 RIZAPがCX戦略部を発足させたのは2019年4月。取り組みを始める前は、RIZAPに関心を持った人がWebで情報収集をしようとしても、ダイエットブロガーの体験記のような第三者情報しか得られず、肝心の自社サイトでは十分な情報を提供できていなかった。サービス内容や同社が顧客に提供したい価値と一般的な生活者が抱くイメージとの間のギャップが課題になっていたのだ。

 「ブロッコリーと鶏ささ身しか食べられないというのは誤解」。それが、澤本氏の出発点だ。RIZAPが勧める低糖質食事法は大学や医療機関との共同研究から生まれたメソッドだが、偏った食べ方を推奨しているわけではなく、会員には社員栄養士が監修した低糖質料理のレシピ本を提供している。また、会員が簡単に食事管理できるよう、IT投資も積極的に行っており、例えば、オリジナルのモバイルアプリ「RIZAP touch 2.0」を使えば、食事の写真を撮るだけで何を食べたかが画像認識で記録され、いちいち面倒な記入をしなくても食事内容を記録できる。これに加え、目標管理支援ツール「Navigator 2.0」で、減量目標までにどのぐらい時間がかかるかも予測できる。「結果にコミットする」ためには手段を選ばないというわけではなく、合理的かつ安全で健康的にダイエットが続けられるような体験を提供しているのだ。

 食事管理と並ぶサービスの柱はトレーニングとサポートだが、こちらも同様にただきついだけのトレーニングを押し付けているわけではない。RIZAPのトレーナーは専門の研修施設「RIZAPアカデミー」で192時間(8時間×24日)に及ぶ研修を受講し、RIZAPメソッドを習得している。店舗への配属後も定期的にアカデミーで学び、最新のトレーニング方法をアップデートするなど、サービスの品質維持に努めている。トレーナー以外にもカウンセラーや管理栄養士、データアナリストがチーム一丸となり、医療機関とも連携しつつ、会員一人一人の目標達成を支援している。

ヘルスケア領域への事業シフトが進行中

 現在のRIZAPは、痩身事業で培ったノウハウと累計会員約13万人分のデータを活用し、事業の軸足を健康とヘルスケアに移そうとしている。大学や医療機関との連携を強化して「健康とヘルスケアのRIZAP」という新しい価値を提供しようとしているのだ。その背景には、医療費の高騰や労働力人口の減少という日本の社会課題を健康寿命の延伸で解決したいという強い思いがある。

 実際、痩身だけでなく疾病予防を目的に会員になる人が増えている。既存顧客を維持しつつ新たな需要を掘り起こして事業成長につなげるため、RIZAPが導入したのがMarketo Engageだ。マーケティングオートメーション(MA)を活用することで、RIZAPのサービスを必要としている人に正しい情報を提供しようというのだ。

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