電通のAIプロジェクト「AI MIRAI」の責任者がAI(人工知能)の技術をビジネスに生かすヒントを語った。
本稿では、2019年2月13日に開催されたAIイベント「THE AI 3rd」における電通 AI MIRAI統括/AIビジネスプランナーの児玉拓也氏の講演から、失敗例に学ぶAIプロジェクトの勘所とAI活用を推進するために必要な視点について紹介する。
「AI MIRAI」は、電通が2017年に結成した社内横断の人工知能(AI)プロジェクトチームだ。児玉氏は、このプロジェクトの統括を務める。
AI MIRAIでは広告領域から「働き方改革」まで、AI活用に関するプロジェクトを約50件手掛けてきた。その中から、AIによる広告コピー自動生成システム「AICO」やテレビ視聴率の予測システム「SHAREST」などの成果も生まれている。
今日の企業では「AI導入」の大風呂敷を広げたPoC(概念実証)は盛んに行われるものの、業務フローに実装されるには至らず日の目を見ないプロジェクトが少なくない。もちろん、挑戦の全てがうまくいくわけではないが、失敗に終わったプロジェクトからも知見を得て、それを次に生かすことは重要だ。
AI MIRAIは「マーケティング発想でAIを乗りこなす」をテーマに掲げ、電通内部の100人ほどのメンバーが職種や部署の壁を越えて協同する。ここでいうマーケティング発想とは、初めに技術ありきではなく、利用者の目線に立って課題起点で考えることを意味する。利用可能な技術に関する知識はもちろん必要だが、その技術を使って具体的にどういう課題を解決していくかというところから出発しなければならないというのだ。
例えばAICOももともとは、社内の業務に対する課題意識から生まれたという。広告のコピーを作る過程においては通常、まずコピーライターが100本以上の案をひねり出し、そこから珠玉の1本を選び抜くというプロセスが必要とされる。質の高いクリエイティブを追求する上では避けて通れない「生みの苦しみ」だが、実際問題として素案となる100本のコピーを作るのは負担が大きい。そこでこの作業をAIにやってもらおうと考えたのだ。
同様にSHARESTも「広告出稿を最適化したい」「見られるべき人に適切な広告を届けたい」という現場の課題意識が形になった製品だ。どちらも現在は社内で活用されており一定の成果を挙げている。
近年のAIブームにおいては、アイデアの新規性ばかりが注目されるようなところがあった。だが、出来上がったものがどんなに素晴らしくても、結果的に現場のニーズに合っていなければ何の意味もない。まず顧客視点から考えるというのは、広告・マーケティングを本職とする電通だからというわけでなく、あらゆる企業に求められる姿勢だ。
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