本連載は今回が最終回です。ここであらためて、B2Bマーケティングならではの広告の当て方、伝え方、評価方法のポイントを、各回の要素を抽出しながらまとめてみます。
小倉 夏
おぐら・なつ 電通デジタル ソリューションプランニング事業部。プランナー。入社以降マーケティング部門にて建設、金融、製造業などにおけるB2Bクライアントのマーケティングサポートに取り組む。現在はマーケティング戦略立案、施策設計、制作、広告運用に従事。また、電通デジタル自身のリードマネジメントの運用にも関わる。
第1回「『B2Bに広告は不要』って本当でしょうか? 」と第2回「『誰も知らない』わが社のビジネス、どうすればターゲットに知ってもらえるか」ではターゲットに自社の商材やサービスについて伝えることの重要性とその伝え方について、第3回「でも、お高いんでしょう?――B2Bマーケティングの広告コストについて 」ではマーケティング活動の効果を検証するための指標と投資コストの考え方、第4回「最後はやはり『人間』だから――B2Bマーケティングにおけるエモーショナルなアプローチの意義」ではマーケティング活動を加速する情緒的なアプローチの可能性について説明してきました。今回は今までの話を振り返りながら、「電通デジタルが考えるB2Bマーケティング」について、あらためてお伝えできればと思います。
本連載ではB2Bマーケティングにおける「広告」の役割を中心に述べてきましたが、そもそもの大前提として、広告というものは時と場合によって、役に立つ「情報」にも耳ざわりな「ノイズ」にもなり得ます。誰しも、根本的に広告を見るためにテレビや雑誌、サイトを見るのではなく、何か情報を得る、コンテンツを楽しむためにメディアに触れるはずです。このことを前提にしたときに、広告がどのように見られるのかという点が非常に重要になってきます。つまり、どうすれば広告を「ノイズ」としてではなく「情報」として受け取ってもらえるのかを考えなければなりません。
テクノロジーの進化に伴い、昨今の広告業界ではそのための工夫もたくさんみられます。例えばB2B領域においては、広告で伝える内容が自身のビジネスにおいて有益だと感じる可能性がある人に当てるために、業種や職種、企業単位でのターゲティングを進めています。
第4回で紹介したように、情緒的なコピーやクリエイティブを活用したり、企業色、宣伝色を排除してユーザーの役に立つようなコミュニケーションを行ったりすることも、製品情報に偏りがちなB2Bにおいて広告が無視されないための工夫の1つです。
広告の効果検証においては、広告がクリックされないことを前提に、広告接触(ビュー)後の態度変容を測定する必要があります。電通デジタルでは新指標「ビュースルー行動転換率」を開発し、クリックせずに広告を見た人の興味喚起がもたらす態度変容を、自然検索によるWebサイト来訪やその後の商品購入、申し込みなどへの貢献まで、各段階を一貫して測定できるようにしています(関連記事:「電通デジタル、デジタル広告効果の新指標『ビュースルー行動転換率』を開発」)。特にB2Bのみを想定して開発した指標というわけではありませんが、検討期間が長く広告活動が売り上げに直結しにくいB2Bだからこそ、このような指標を取り入れることが有効かもしれません。
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