アトリビューション分析の先駆者でありテレビCMとネット検索の連動を日本で初めて仕掛けたことでも知られるアタラの有園雄一氏の講演から、アトリビューション分析の基礎と実践的な活用法を学ぶ。
今より得られるデータがはるかに少なかった「Web 2.0」の時代、マーケターはどの広告にいくら予算を配分すれば良いのか、自身の経験や勘に頼りながら、手探りの運用を余儀なくされていた。そこに救世主のごとく現れた「アトリビューション分析」。もともと金融の分野で用いられていた概念が最新の広告手法として米国で広まり、日本では2009年の末ごろ、広告運用コンサルティングとWeb API開発を手掛けるアタラによって最初に紹介された。
本稿では、2016年5月12日に開催された「第10回 Web & デジタル マーケティング EXPO 春」におけるアタラ取締役COO 有園雄一氏の講演「アトリビューション分析(広告効果測定)の基礎とDual AISAS Modelを適用した応用事例」から、アトリビューション分析の基礎と実践的な活用法を紹介する。
「attribute」という言葉を辞書で引いてみると、「〜のおかげだと考える、〜に起因する」という意味が出てくる。有園氏がアトリビューションという言葉を初めて耳にしたのは、2008年に米国サンノゼで開かれたイベントだったという。PCを製造販売するレノボが、自社事例を紹介する中で「アトリビューション分析を取り入れたところ、コンバージョンの獲得効率が上がった」と語るのを聞き、この言葉を「コンバージョンへの貢献度」と訳したのだそうだ。
「通常、商品の購入や資料請求の完了を伝える『サンクスページ』が表示されると、コンバージョンが発生したと見なされます。しかし、一体そのコンバージョンは、何によってもたらされたのでしょう。一般的なアクセス解析ツールや媒体社の計測ツールは、コンバージョンに至る直前のラストクリックしか計測しません。アトリビューション分析をしなければ、たとえ最初にバナー広告を見ていたとしても、全てはラストの流入をもたらしたリスティング広告のおかげだと判断するしかない。これではバナー広告の価値が見いだせず、適切な予算配分ができなくなってしまいます」と、有園氏はアトリビューション分析の意義を語る。
人々の行動は多様だ。バナー広告をクリックしてサイトに入り、そのまま購入に至るケースがないわけではないが、多くの場合は、ゴールまで複雑な道のりをたどる。バナー広告を見て興味を持っていたものの、そのまま忘れていて、あるときふと思い出して再訪するということはよくある。検索結果のリスティング広告に表示されて初めてサイトの存在を知り、以後はブックマークしておいたURLから何度も訪れ、関心が高まった頃に購入するということもある。はたまた、サイトを訪れたときには特に興味を抱かなかったものの、後日リターゲティング広告が表示されて印象を新たにするということだってあるだろう。「カスタマージャーニー」のジャーニーとは「あてのない旅」を意味する。旅程表通りにはいかないのが当たり前なのだ。
複数の広告キャンペーンや流入チャネルを経由してコンバージョンに至った場合、どの流入元がどの程度コンバージョンに貢献しているのかを分析し、各流入元の貢献度を導き出すことがアトリビューション分析であり、この手法を取り入れてPDCAを回すことがアトリビューションマネジメントである。
2010年頃にアトリビューションが業界内でバズワード的に盛り上がった背景には、アトリビューションがデジタル広告を取り巻く業界全体の発展に寄与すると期待されたことからだと有園氏は語る。そして、その構図を以下のようにまとめた。
媒体社 | これまでより高い媒体価値を自社媒体と相性の良い広告主に示すことができ、結果として広告収益の拡大につながる。 |
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広告主 | これまでより効果的なメディアプランを立てることができ、結果としてコンバージョンの増加や売り上げの拡大につながる。 |
広告代理店 | バナー広告の取引量を増加できると同時に、売り上げも拡大することができる。 |
「バナー広告の出稿額が増加し、業界全体としてより多くのお金が流通することで、業界の発展に寄与する。アトリビューションによって、より適切にお金がアロケーション(配分)されることで、みんながハッピーになるというわけです」(有園氏)
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