また、広告配信手法の多様化に合わせ、ターゲティング手法も着実な進歩を遂げてきた。
2000年代前半までのターゲティングは、メディアから提供されるユーザーデモグラフィックを用いたものが主流で、その後の行動は「ユーザーまかせ」という側面が強いものであった。
GoogleやOverture(現Yahoo!リスティング)など開始したリスティング広告によって、ユーザーの自らの興味関心が反映される“検索キーワード”やその“検索結果”に対して広告を配信する「行動ターゲティング」が採用され、注目を浴び始める。
しかし、ユーザーが比較サイトなどを検索する行為は、あくまで目的達成の“手段”にすぎず、必要以上に時間を費やさないことが明らかになると、あらためて、ユーザーの滞在時間や閲覧頻度に注目が集まるようになった。そこで登場したのが、ユーザーがどのようなサイトを閲覧し、どのような商品を購入したのかというオーディエンスデータを用いた「オーディエンスターゲティング」という手法である。オーディエンスデータとは、Cookieをもとにした“個人を特定しない行動履歴データ”である。ポータルサイト等が自社会員におけるWebサイトの訪問履歴をそのサイトカテゴリによってセグメントしたデータである。このオーディエンスターゲティングによって、広告とサイトとの関連性ではなく、ユーザーの行動履歴の特徴から「どんな人に広告を出すか」をターゲティングすることが可能になった。
さらに、過去のサイト訪問者に対してバナー広告を配信して再来訪を促す「リターゲティング」が台頭し、現在ではただサイトに戻すのではなく、離脱ユーザーがどのような商品を閲覧したかという情報を付加して該当の商品ページにまで誘導する「ダイナミック・リターゲティング」も出現してきている。
今まで見てきた通り、「デジタルマーケティングの進化」は
という「テクノロジーの進化」とともにある。そして、具体的なデジタルマーケティングの進化の方向性とは、広告配信技術の多様化によって「費用対効果の追求」を実現し、ターゲティング精度の向上によって「確実なユーザー行動の促進」の2点に集約される。
このようなデジタルマーケティング環境の進化は、あらゆる企業に自社にとって最適化されたデジタルマーケティング活動を実施できる“環境”をもたらすこととなった。環境とは、具体的には
ことで、「顧客一人一人の情報を詳細に把握し、これから取り得る行動を分析し、最も効果的な提案を行う=個客マーケティング」が実施可能な環境のことを示している。
既に多くの企業が、「個客マーケティング」を通じたマーケティング効果の最大化を追求する取り組みが、企業全体の競争力に大きく影響する左右することを認識しており、既にそれに向けた動きが始まりつつある。
具体的な取組み事例については、後編でお伝えすることとする。
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