テクノロジーの進化で個客マーケティング時代が幕を開ける【後編】転換期を迎えた企業のデジタルマーケティング(1/2 ページ)

前回は、企業がデジタルマーケティングの進化によって、1. 顧客をマスではなく「個」で捉え、2. それぞれにコンタクトポイント構築が可能になり、顧客一人一人に最も効果的な提案=「個客マーケティング」を実践できる環境が整ったことを説明した。今回は、個客マーケティングへの取組み実態とトレンドについて、お伝えしたい。

» 2016年02月19日 12時00分 公開
[矢野経済研究所 ICTユニット]
矢野経済研究所 ICTユニット

 前回は、企業がデジタルマーケティングの進化によって、1. 顧客をマスではなく「個」で捉え、2. それぞれにコンタクトポイント構築が可能になり、顧客一人一人に最も効果的な提案=「個客マーケティング」を実践できる環境が整ったことを説明した。

 今回は、個客マーケティングへの取組み実態とトレンドについて、お伝えしたい。

 近年のスマートフォンやソーシャルメディアの急速な普及やWebテクノロジーの進化により、企業は「顧客接点の増加」「大量のデータ収集」「リアルタイムでのデータ分析」などが可能になった。

 それらの情報を活用し、適切なユーザーへターゲティングし、適切なコンテンツを届けることで「コミュニケーションの最適化」を図ることが、デジタルマーケティング≒個客マーケティングの目的となっている。

 個客マーケティングの実施ステップは、大きく「顧客接点ごとの顧客データ収集」と、それらの情報を分析によって可能になる「ターゲット設定とアクション実施」に分けられる。

 近年は、POSシステムやポイントシステム、顧客データベースの導入が進み、顧客情報の収集・分析が可能になっており、EC事業者は、顧客との各接点(チャネル)において、以下の通りさまざまなデータを取得している。

図表 顧客接点(チャネル)と取得データ(矢野経済研究所作成)《クリックで拡大》

 上記の取得データは、大きく2種類に分類できる。

  • アクセス解析系データ=広告やウェブサイトのアクセス履歴などから得られるオンラインデータ
  • 顧客DB=店舗のPOSなどで集積した購買履歴などのオフラインデータ

 アクセス解析系データ(オンラインデータ)からは、「カート離脱ユーザー」や「初回購入個客」など、顧客DB(オフラインデータ)では「購入頻度」や「購入単価」などユーザー状況の把握が可能となり、そこからターゲット選定を行っている。

 基本的に、ECサイトは「全ての顧客に同じ情報を表示」することを前提としており、アクセスしている「顧客の属性情報」等に応じて、提供する情報を変えるものではなかった。

 そのため、商品の販促等顧客へのアクションを行う際には、顧客DB(氏名・住所、メールアドレス、購買履歴など)をもとに、購入者や会員登録したユーザーに対するDMやメルマガ送付が基本であった。

 一方、アクセス解析系データを活用したサービスを利用によって、ユーザーのサイト閲覧状況の把握が可能になった。個々のユーザーのサイト内遷移動向や、Cookie情報を使えば購買履歴などが確認できるが、あくまで確認可能なのは「アクセス後」であり、リアルタイムでアクセスしている顧客の属性情報は分からなかった。

 つまり、これまでは「顧客DB」と「アクセス解析系データ」とは、ひも付けはできていなかったのである。

図表 ターゲットに応じたアクション事例(矢野経済研究所作成)《クリックで拡大》
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