テクノロジーの進化で個客マーケティング時代が幕を開ける【前編】転換期を迎えた企業のデジタルマーケティング(1/2 ページ)

矢野経済研究所では、国内の主要ECサイト事業者18社の協力を受け、各社のデジタルマーケティングに関する取組動向と展望を集計・分析したレポートを上梓している。本稿はそこで解説しきれなかった部分を補足しつつ、2回にわたってお伝えする。

» 2016年02月18日 08時00分 公開
[矢野経済研究所 ICTユニット]
矢野経済研究所 ICTユニット

 キーワードは「デジタルマーケティング・テクノロジーの進化」と「個客マーケティングの本格化」である。

 なお、デジタルマーケティングとは企業のマーケティング活動におけるデジタル領域を指し、広告だけに限られず、宣伝/広報/販促活動全てを含む幅広い概念で示されるのが一般的である。ただ今回のレポートでは、ECサイト事業者にフォーカスした調査研究を行ったことから、本稿におけるデジタルマーケティングは、主として従来のWebマーケティングの延長線上にあるものと捉えていただきたい。

進化する「ネット広告手法」と「ターゲティング手法」

 主要ECサイトを対象にデジタルマーケティングの実施状況について調査した結果、主に利用されているインターネット広告は下記の通りであった。

  • リスティング広告
  • ディスプレイ広告(アドネットワーク/DSP)
  • ソーシャルメディア広告(Facebook、Twitter、LINEなど)
  • アフィリエイト広告
  • 純広告

 ここであらためて、インターネット広告の種類について、時系列で整理しておくことにする。

 インターネット広告の黎明期とされる1990年代後半から2000年代初頭までは純広告とメール広告が中心であった。この時代は「サイトPV数≒広告閲覧数」との考えから、アクセス数の多いサイトへの物量作戦型の広告が中心で、費用対効果という視点はまだ重視されていなかった。

 2000年代に入って検索連動型のリスティング広告が登場する。ユーザーの検索ワードを基に関連性の高い広告を検索結果に表示することで、ユーザーが求める製品/サービスとその提供者である広告主をマッチングすることを可能にした。このリスティング広告によって、相手が見えない中で”数を撃てば当たる“的な広告から、ユーザーと広告主との関連性の高さを重視する広告配信手法が主流となった。その後は広告配信の精度向上を目指して、ユーザーが閲覧しているコンテンツ内容に即した広告が配信されるコンテンツ連動型広告や、過去の閲覧履歴や直近の検索ワードなどの「行動ターゲティング」の要素を加えた興味関心連動型広告、さらには主にCookieを使用してユーザーとその行動履歴を追跡し、他サイト上でも特定広告を表示させることで再度の訪問を促す「リターゲティング広告」などが登場するなど、現在は「費用対効果」を追求した広告配信が主流となっている。

 その流れと並行して、複数のWebサイトを束ねて広告を同時配信するアドネットワークという広告プログラムの配信方式が台頭する。アドネットワークは、個々にはPV数やアクセス数の少ない小規模サイトをネットワークに組み込み、全体としては多くのトラフィック量を有する広告メディアとして広告主に販売可能にする仕組みである。これにより、広告主側は「ターゲット」と「キーワード」さえ指定すれば最適な配信先がマッチングされることになる。さらに、複数あるアドネットワークをまとめるDSP(Demand-Side Platform)という統合プラットフォームも登場している。

 また、近年はスマートフォンの急速な普及に伴い、YouTubeなどの動画共有サイトにおける「動画広告」や、Facebook、TwitterやLINEなどを用いた「ソーシャルメディア広告」が存在感を増している。特にソーシャルメディア広告は、ソーシャルメディアを通じた情報の収集・分析によってセグメント別の特徴・興味・関心が把握できるため、特定セグメントへのリターゲティング広告やリスティング広告の配信が可能になっている。

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