メールマーケティングを単に「メールによる販促」という観点で捉えるのではなく、そこからの拡がりをイメージして取り組むことが大変重要です。広義に捉えれば、メールマーケティングは、CRMや顧客中心の考え方に基づいたアプローチです。仮に手段が変わったとしても、そこで得た考え方やノウハウはある程度継続して有効に働くでしょう。
この連載も最終回になりました。これまでお読みいただいた方々には、お付き合いをいただき有難うございました。
さて、これまで、メールマーケティングの機運が高まってきているという状況変化について、また、メールマーケティングを効果的たらしめる上で特に重要である反面、実践が難しいターゲティングについてお話させていただきました。さらに、ターゲティングを高精度に行うキャンペーンマネジメントについてもご紹介しました。
最終回の今回は、総括として、メールマーケティングの取り組みが最終的に持つ意味は何か? ということについて触れたいと思います。
言うまでもなくメールマーケティングというのはCRMの一環ですが、いわゆるCRM的な取り組みというのは、詰まるところは顧客を中心とした考え方/取り組みです。そうした「顧客中心」の取り組みには、実践に向けて非常に高い障壁が存在します。
例えば、顧客中心の取り組みとしてマルチチャネル統合というテーマが謳われることがあります。そもそも消費者は、情報収集、購買、サービスの享受などの各ステージにおいて、メール、Webサイト、ソーシャルメディアなどのインターネット上の各チャネル、あるいは、ネットに限定せず、実店舗、DMなども含めたさまざまなチャネルのうち、必ずしも単一のチャネルのみを選択するわけではありません。一例として、メールで受け取った情報を基にECサイトで購入する人もいれば、メールで受け取った情報を基にサイトで詳細情報を確認しつつ、購入は実店舗で行うという人もいます。このときにチャネル間の連携がなされておらず、つじつまが合わない状況になっていると、お客様にネガティブな印象を抱かせかねませんし、それは企業にとっては機会損失となります。
そこで、顧客を軸に置くことで、それら複数のチャネルを横断し、一貫性を持ったサービスの設計および対応を図る、というのがマルチチャネルの統合という考え方です。これは突き詰めていくと組織論に発展します。ECとリアル店舗との間に存在するカニバリを解消し、相乗効果を発揮できるようにしなければならなかったり、あるいは、プロダクトベースに敷かれた組織体制では本来達成されるべきクロスバイイングが限定的になってしまうことから、組織の再編成が必要になったり、といったことが想定されるからです。
こうしたことは顧客を中心に考える上では非常に重要である反面、全社的な取り組みであるため、体力、時間、そして何よりも意識改革が求められるという意味で、相当に高い障壁と言えます。
また、CRMの評価における課題も存在します。一般的にCRMの評価指標としてLTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)が採用されますが、特に、正確な利益率を計算する上では、プロダクト単位、キャンペーンチャネル単位でのコスト配分などをマーケティング部門のみで算出することは容易ではありません。そのため、結局指標値として計算することをあきらめ、観念的に捉えるにとどめてしまうことはよくあるのではないかと思います。
このように、顧客中心の取り組みを難しくしている主要因の1つに、一部門のみでは解決し得ないということがあります。
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