第2回 メールマーケティングの課題――メールをきちんと届けるのは難しい【連載】メールマーケティングの最前線(1/2 ページ)

メールマーケティングを行う前提としてまずは解決しておかなければならない問題がある。「到達性の問題」と「デバイス多様化の問題」である。

» 2012年11月12日 08時11分 公開
[北村伊弘,エクスペリアンジャパン]

 「第1回 最新国内メールマーケティング事情」は、企業におけるメール活用の変化、つまり、かつて主流だった一斉同報型の「メールマガジン」から、徐々に本来的な「メールマーケティング」へと、マーケティング的な気運が高まってきているという状況の変化について、それがどういった背景に基づくものなのか、簡単にまとめました。2回目となる今回は、トレンドとなっている具体的なメールマーケティング手法の話に入る前に、前提として解決しておかなければならない問題について、お話をしたいと思います。

到達性の問題

 よく言われるように、「メール」は他のコミュニケーション手段と異なり、「プッシュでの情報伝達が可能であること」、さらに、そのプッシュという特性を利用した「タイムリーな情報伝達が可能であること」、これが大きなメリットです。意識的であるかどうかは別として、通常企業がメールを販促用途で活用する際、こうしたメリットを活かすことを念頭に取り組んでいるものです。すなわち、これは裏を返せば、当たり前の話ですが、「情報が確実に届かなかった場合」、あるいは、「タイムリーに伝えることができなかった場合」、いくら緻密なメールマーケティング施策を練っていたとしても、実際にこちらの思うように届いていないわけですから、十分な効果が得られないということになります。

 これまでメール配信に関わっていない方からすれば、そもそもメールは届くのが当たり前と思われるでしょうが、実はメールは、特に企業が配信するメールは、確実に届けることが必ずしも容易ではありません。一度に大量のメールを配信した際に大幅な遅延が発生したり、受信がされたとしても迷惑メールフォルダに振り分けられてしまったり、あるいは、送ったはずのメールがメールボックスに届くことなくどこかに喪失してしまったり、ということが割と頻繁に生じます。こうした事象は、迷惑メールとして誤認識された、あるいは、一度に大量のメールを配信することが携帯キャリアやISPの受信環境へ過度の負荷となることから、何らかの制御が施された結果生じたりします。これらを解決するためには、例えば、迷惑メールとして誤認されないよう、なりすまし防止技術(SPFやDKIMなど)を採用することはもとより、存在しないアドレスを配信対象から除外する仕組みや、各受信環境に最適化された速度で配信が行えるようチューニングを継続的に施していくなど、技術的な対応と、そのベースとなるナレッジをいかに運用の中で蓄積していけるかが重要です。

 メール配信においては、こうした専門のノウハウや技術が求められるところから、自社開発よりは既存製品を、あるいは、既存製品の中でも特に上記のような対応を含むシステム運用までも行ってくれるASPサービスを選択されるケースが一般的になっています。メール配信システムには、ASPサービス以外にサーバーインストール型のパッケージもあり、以前は大規模の配信をする場合には、コスト面からパッケージを選択されるケースが多かったのですが、近年ではASPサービスの市場は成長を続けている一方、パッケージ市場は縮小傾向にあり、その理由の1つには、2000年中盤以降顕在化されるようになった到達性の問題に対し、コスト面も含め自社の運用体制にて継続的に対応していくことの難しさから、ということがあるようです。

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