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» 2012年12月03日 08時23分 公開

第4回 「アクセス解析」でも「Web解析」でもない【連載】清水誠のWeb解析ストラテジー(1/2 ページ)

Web Analyticsは「アクセス解析」や「Web解析」と訳されますが、実はどちらも微妙に異なります。「分析」と「解析」の違い、「アナリシス」と「アナリティクス」の違い、「ログ」や「アクセス」ではない理由など、紛らわしく悩ましい現状について整理しつつ、注意点をまとめました。

[清水誠,ITmedia]

アナリティクス=解析ではない

 Web解析は英語では”Web Analytics”と呼ばれます。Web解析全般の意味で「アナリティクス」と言うと、たまに「Googleアナリティクス」の略だと勘違いされるのですが、「アナリティクス」は商品名ではなく一般的な英単語です。「分析」を意味する「アナリシス」をMerriam-Websterで調べると、“separation of a whole into its component parts”(全体を部品に分解すること)とあります。Wikipediaでは“Analysis is the process of breaking a complex topic or substance into smaller parts to gain a better understanding of it.”(複雑なトピックや物質を部品に分解することでその理解を深めるプロセス)と記述されています。

 一方、”Analytics”(アナリティクス)はMerriam-Websterでは“the method of logical analysis”と解説されています。つまり、「アナリシス」は個別の分析行為を指し、「アナリティクス」は分析の方法全体(方法論)を指すのです。

 日本語では、“Analysis”は「分析」、“Analytics”は「解析」と訳されることが多いようです。日本語の「分析」は「複雑な事柄を1つひとつの要素や成分に分け、その構成などを明らかにすること」(小学館デジタル大辞泉)を意味するので、英語の“Analysis”と一致しますが、日本語の「解析」は「事物の構成要素を細かく理論的に調べることによって、その本質を明らかにすること」(小学館デジタル大辞泉)と学術的な意味合いが濃いので、分析方法としての英語の「アナリティクス」とはやや異なります。

 細かさという観点で単純比較すると、「解析<分析<アナリティクス」になります。

アクセスやログは一部でしかない

 Web解析は当初、「ログ分析」や「アクセスログ分析」「アクセスログ解析」などと呼ばれていました。これは、Webサーバーが書き出すシステム監査用のログファイルを使って分析をしていた頃の名残です。最近はタグ(JavaScript)を使って行動分析のための専用データを能動的に取得し、サーバーに送信する方式が主流なので、「ログ分析」や「アクセスログ分析」という呼称では実情に合わなくなりました。

 現在では、Web Analyticsに相当する訳語としては「アクセス解析」が主流になっています。ただし、英語のアクセス(Access)は「近づく」という意味の動詞であり、継続的に利用するという意味合いが薄くなります。意味が近い類義語の「アプローチ」で置き換えてみると、違いをイメージしやすくなります。

 「アクセス」することでWebサイトの利用を開始した後に、サイトを回遊して情報を探索したり、購入や登録などのアクションを実行します。セッションが終わり、サイトを離脱した後も、サイトを再訪問することがあります。Web解析に詳しい人であれば、このような一連の行動を訪問者の視点で追いかけて分析する必要性について理解できていると思いますが、初めて「アクセス解析」という言葉を聞く人は、その表現から「何人がサイトにやってきてどのページを何回見たのか、のように細かい数字を見ること」というようなスタティックな集計作業をイメージしてしまうかもしれません。

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