購買プロセスを巡る新たな情報流通サイクルの質は、1人ひとりの顧客の「経験の中身」によって決まる。現代のマーケティング担当者は「顧客の経験」を良きものに高める努力を迫られている。企業と顧客の関係はより深く、より密接にならざるを得ない。SDLのアジア/パシフィック地域を統括するバイスプレジデント Hans de Groot氏に「顧客経験」の重要性を聞いた。
企業と顧客の関係を考える時、マーケティング担当者にとってキーなるコンセプトがある。かつては「(企業と顧客の間の)結びつき(=エンゲージメント)」だったが、いまは(商品なりサービスを通じてなされる)「顧客の経験」(=カスタマーエクスペリエンス)である。
マーケティング担当者が前者に注力できたのは、顧客との接点が主に対面形式の場(店頭)だった頃の話だ。小規模な小売業を例にとると、日頃から付き合いのある近所の人たちが彼の「主要顧客」であり、彼にとってみれば、ご近所との「結びつき」「絆」を大事にすることがビジネスの成功を意味していた。
後者(顧客の経験)がマーケティング担当者に重視され始めたのは、Webサイトがビジネスに大きなインパクトを持ち出した頃である。消費者はソーシャルメディアや商品比較サイト、あるいは企業のWebサイトで価格やスペック情報を仕入れ、実際に商品やサービスを購入すると、その使用感を含めたさまざまな「経験」を自発的に発信するようになった。そして、他の消費者がそれらのクチコミ情報を参考に購買行動を起こし、さらなる口コミ情報が拡散され……。
購買プロセスを巡るこの新たな情報流通サイクルの質は、1人ひとりの顧客の「経験の中身」によって決まる。現代のマーケティング担当者は「顧客の経験」を良きものに高める努力を迫られている。顔の見える身近な人々との付き合いを重視する牧歌的な時代は終わり、顔の見えない顧客の評判に気を使う時代の到来というわけだ。
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