インターネット創成期に、日本のインターネット広告の仕組みを作り上げた功労者の1人、デジタルインテリジェンス 代表の横山隆治氏の最新著書が「DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門」である。横山氏のインタビュー連載第4回。横山氏が次に注目しているテクノロジーやサービスとは。
キーワードは、「スマートフォン」「リッチメディア」そして「オフラインの購買データとの融合」ですね。現在DSPはPC向けが主ですが、インプレッションがスマートフォンに流れ始めてはいます。スマートフォンにインプレッションが流れる分、PCは動画DSP などリッチメディア化すると思います。また、スマホは一気にリッチメディア化する可能性が高いと思っています。マス広告に大きな予算を持っている企業は、いまのスマートフォンに出てくるようなバナー広告には興味がない。それよりも、動画を含めたリッチメディアの可能性を検討するでしょう。
実際にオーディエンスデータを使ったところ、リアルな購買データが蓄積されるもの、例えばポイントカードなどの仕組みとクッキー情報を掛け合わせることで新しい可能性が出ます。例を挙げると、ネット上のコンバージョンということが、あまり直接的なビジネスの目的ではない、ビールや飲料といった企業は、ポイントカードにひも付いたクッキーに対してビールのすごい「しずる」がアワワワっと出てくるような訴求のリッチメディア広告を配信して、その人がコンビニでビールを購入したかどうかを検証する。クッキーにデータを統合して広告配信し、そこでリアル店舗での販売にどのような影響が期待できるか。サンプルデータではありますが、ある程度効果が分かると思います。実は自分でやってみたいケースでもあります。
Yahoo!JapanとTポイントの提携、POSデータやポイントカードなどリアル店舗の情報とネットとの提携がこれからますます増えます。ビッグデータの分析というのは、恐らく今後このようなプロモーションを実施する側に義務付けられる時代になると思います。現在インターネット広告を活用している広告主は、コンバージョンを目的とする企業が多くを占めていますが、リアルな購買がビジネスゴールである企業が一気にデジタルの世界に来ると、ディスプレイ広告マーケットが盛り上がっていくと考えます。
今まで購買過程のプロセスを組む時に、どうしても認知の段階は、ノンターゲットでプロモーションを行うしかない部分がありました。そのような広告にふれてきた世代では、コンバージョンした人のデータから類推すると、新規顧客を獲得するための広告にもセグメントやターゲティングした広告が効くので、コストの使い方が変わるでしょう。そうすると、データをきちんと読み解いて戦略的に活用することになると思います。また、リッチメディア広告が普及すると、広告の一配信あたりの単価は高くなるでしょう。しかし、配信単価が高くなっても購買の可能性の高い消費者に広告配信しているので、ターゲットにリッチな訴求をしたほうが、実は認知度の効果が高いのではないかという仮説につながる。キャンペーン実行後、データで検証もできますし。インフォシークやDACでインターネットの広告に関わる前は、私はずっとマス広告ばかりやっていたので、これからやっとマスの世界にインターネットを少しつなぐことができるかな、という気がします。
※この記事はExchangeWire Japanの「Interview:『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』著者インタビュー」の原稿を一部修正して転載しています。
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