インタビュー
» 2020年12月29日 08時00分 公開

「マーケティング視点」はマーケターだけが持っていればいいわけではない「マーケティング視点のDX」著者が語る【後編】(1/2 ページ)

マーケティング関連の話題書著者とDXで医療分野にイノベーションを起こすベンチャー経営者へのインタビュー後編。

[大西花絵,ITmedia]
「マーケティング視点のDX」(日経BP)

 前編「江端浩人氏×峯啓真氏 なぜDXの成功にマーケティング視点が欠かせないのか」では、江端浩人氏が最新刊「マーケティング視点のDX」(日経BP)で提唱した新しいフレームワーク「DX2.0の4Pモデル」について、江端氏および同書で実践例として紹介された医療ベンチャーのシェアメディカル 代表取締役 峯啓真氏に聞いた。

 後編では両氏に、DXを進める企業とそこで働くマーケターのなすべきことについて、さらに深く掘り下げてもらった。

DXが全社の総力戦ならば

――ユーザーの困りごとを見つけて、解決に向けて自社のビジネスをそれにつなぐのがマーケターの役割ということかもしれませんね。

 ネクステートの例で言えば、医師が聴診器の付け外しで耳を痛くしているという問題を、ほとんどの人は知らないわけです。医師は医師でそれを職業病のようなものだと思って、解決することを諦めている。僕のしたことはこの課題(Problem)の存在を知ってデジタル聴診デバイスという未来を予測(Prediction)したこと、それを実現するメーカーを探して要件を伝え、Processを構築したことです。

――伝える能力の高さもマーケターの強みですね。

 そうですね。ただ、白状すると僕も全てを俯瞰していたわけではありません(笑)。最初はただ「聴診音をデジタル化します」と言っていただけなのですが、ベテランのドクターや言語聴覚士の方々(People)から自然とたくさんの相談がくるようになったのです。

――デジタル聴診デバイスへの関心の高まりの背景としてはコロナ禍も大きかったのでしょうか。

 はい。実際、岐阜県のある病院では、COVIDー19の感染者を診察する際、衛生上の工夫としてネクステートを使った聴診を実現しています。ワイヤレスの利点を生かしてグリーンゾーンからスピーカーで聴診するのです。

 この新しい診察スタイルによって、聴診データを見て医師と看護師とでディスカッションできるようになりました。このことを聞いて、僕はDXが次のステージに上がったと感じました。プロダクトが同じでもドクターサイドで使い方がどんどんアップデートされているのはとても面白いですね。

江端 プロダクトがシンプルであるからこそ、デジタル化することで使いみちが広がって爆発的に普及するというのは、あり得ることだと思います。売るモノが同じでも、デジタルで可能になるビジネスモデルというのもあるでしょう。それらもまたDXです。マーケティング視点を持った人とITの視点を持った人、開発者が一丸となれば、新しい価値がどんどん生まれます。

 AirbnbやUberもそうですよね。部屋の貸し借りや車の乗り合いは知り合い同士では昔から普通にやっていたこと。それを、デジタルを使うことで見ず知らずの人同士でも使えるようにしたわけです。マーケティング視点で人々が何に困っているのかを見ていく中で自然発生的に生まれたのだと思います。

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