「ファッションテック」から「3密回避」まで データによる価値創造と課題解決の考え方ルグラン泉浩人氏に聞く(1/2 ページ)

気象データを活用してファッションコーデを提案するサービスをデジタルエージェンシーのルグランが提供している。同社は次なる展開としてIoTセンサーによる二酸化炭素濃度測定サービスを開始。なぜ? 共同CEOの泉浩人氏に聞いた。

» 2020年11月25日 08時00分 公開
[野本纏花ITmedia]
ルグラン代表取締役 共同CEOの泉浩人氏

 ルグランは、NTTグループの気象会社であるハレックスの気象データを活用してその日の天気や気温の変化に合わせたコーディネートを提案するサービス「TNQL(テンキュール)」を2017年から提供している。

 ルグラン代表取締役 共同CEOの泉浩人氏は、オーバーチュア(現ヤフー)の日本進出に参画するなど、日本のインターネット広告の黎明期からデジタルマーケテイングに携わってきた。そんな泉氏が気象データ活用に目を向けたのは、過去の分析だけでなく近未来予測ができるという気象データの特性による。

 天気と人々の行動の関係を解き明かすことで広がる世界は大きいと感じた泉氏は、アパレル企業に気象データをそのまま販売するのではなく、自社でTNQLを開発した。TNQLで提案されたコーディネートのイラストをクリックすると、実際にアパレル商品を購入できるECサイトへと誘導する「広告プラットフォーム」としての展開を考えたのだ(関連記事:「ファッションテック参入のルグラン 泉 浩人氏に聞く データを価値に変える方法とは?」)。

 TNQL立ち上げから3年をへて、新たな取り組みも始まっている。泉氏に話を聞いた。

気象データと他のデータを掛け合わせると

 新たな取り組みの一つが、「TNQL API」の提供だ。これはTNQLの核となる気象データとユーザー行動データに基づくレコメンドエンジンの部分を外部に提供するためのB2B向けサービスだ。TNQL APIを利用することで、メディアサイトやECサイト・アプリなどは最新の天気予報とその日の天気にマッチしたおすすめコーディネート提案を簡単に実装することができる。また、導入企業が天気や気温に合わせて、自社の商品や情報・コンテンツをレコメンドするためのAPI開発も個別に請け負っている。

 APIを提供する背景としては、ファッションテックサービスのTNQLを提供する中で「うちはアパレルではないが、気象データに連動したレコメンドエンジンには興味がある」という問い合わせが、数多く寄せられたことがある。「他の業種であっても、裏でやることはTNQLと同じ。それならAPIで出してしまおうということになった」と泉氏は語る。

TNQL API

 個別開発の事例としては、三越伊勢丹が運営する伊勢丹オンラインストア内のメンズページにおいて気温や湿度などから算出される独自の指数をベースに、天気に合ったフレグランスをレコメンドするサービスなどがある。実店舗のフレグランス売り場では、湿度が高い夏はフレグランスの香りが抜けていかないため、軽めのものを提案する傾向がある。逆に、湿度が低い冬は強めの香りを選んでもいいと伝える。「データを活用することで、ECサイトにおいても実店舗と同じような体験を提供することができるのです」(泉氏)

 航空会社Spring JapanのWebサイトでは、旅先の気候に合わせたコーディネートを提案するコンテンツを提供した。他にも浅草の屋内忍者体験施設「NINJA SAMURAI DOJO」では、雨の日や寒い日が集客の好機であるとして、施設周辺の天気と利用推奨日を提示することで誘致を図るパーツをWebサイトに埋め込んでいる。

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