20周年を迎えた@cosmeとその運営元のアイスタイル。同社のこれからの戦略に、あらゆるものがサービス化する時代のブランドの在り方を学ぶ。
コスメ・美容の総合サイト「@cosme」を運営するアイスタイルは2019年9月26日、「@cosme Partner Conference」を実施した。本稿ではここで同社代表取締役社長兼CEOの吉松徹郎氏が語った今後の事業戦略についてまとめた。
「@cosme」は2019年7月でサービス開始20周年を迎えた。設立当初は女性のインターネット利用率はわずか8%。「インターネットを利用する層は化粧品に興味があるのか」といわれていた時代だった。
しかし、インターネットが社会へ浸透した現在、@cosmeは20〜30代女性を中心とするユーザーの50%以上が毎月アクセスする日本最大級のコスメ・美容総合サイトへと成長を遂げた。
化粧品の口コミメディアに加えて2002年11月には 化粧品オンラインショッピングサイト「cosme.com(現在の@cosme shopping)」を立ち上げた。2007年には「ネットとリアルの融合」を掲げて「@cosme store」をリアル店舗として開設した。こちらはさまざまなブランドの商品を実際に試したり購入したりすることができるという新たな価値を提供し、大きく成長した。@cosme storeは現在、日本にとどまらず海外にも広く店舗を展開している。
このように、日本のコスメ・美容領域においてオンラインでもオンラインでも圧倒的な存在感を獲得したアイスタイルだが、成長の裏側で吉松氏は常に「ブランドの情報を生活者が理解するためにはどうしたらいいのか」を考えてきたと語る。
20年前、情報の多くはブランド側にあった。しかし、インターネットの普及により生活者はブランドの商品情報に加えて、ユーザーが発信する口コミ情報も取得することができるようになった。さらに多くのSNSが生まれ、ユーザー同士が情報を直接やりとりすることが当たり前となった現在では、情報は生活者の方が圧倒的に多く持つようになった。
情報の主導権がブランド側から生活者側へ移行した今、ブランドにとって生活者理解は大きな課題となっている。
そこで、吉松氏は「今後もブランド側と生活者のよりよい出会いを実現したいと考えた結果、@cosmeのデータベースを可視化することが重要」と考え、新たなプラットフォームサービスを発表した。それが「Brand Official」だ。
なぜデータベースの可視化がブランドと生活者の相互理解につながるのかといえば、そこに「@cosmeだからこそ見えるデータがあるから」というのが吉松氏の考えだ。
@cosmeと@cosme shopping、@cosme storeは購買データを同じデータベースで一元管理しているため、全てのユーザーIDとプロダクトID(商品情報)がつながっている。
ブランドは顧客データを自社で保有しているものの、ユーザーが他にどのブランドに興味を持ち、どのような商品を利用しているのかまでは把握できていない。しかし、@cosmeのデータベースを使えば、こうしたユーザーを深堀りした情報まで閲覧することが可能になる。つまり、@cosmeのデータベースを可視化することは、化粧品ブランドとユーザーの関係性を可視化することに他ならない。
データベースの可視化に当たって同社ではブランドとユーザーの関係性を「ブランドエンゲージメントランク」と称して、両者のつながりを具体的に数値化した。
ブランドエンゲージメントランクでは、@cosmeからブランドへアクセスしたユーザーを最下層のEとして、そこから商品情報の詳細や口コミへアクセスしたユーザーをD、さらにブランド情報までアクセスしたユーザーをC、店頭でサンプルやカウンセリング、@cosmeが開催するイベントなどのオフラインでアクセスしたユーザーをB、実際に商品を購入、リピートしているユーザーをAと定義している。
これまでの@cosmeではこのランクの中でCに当たる部分、オンラインでブランドへアクセスしたユーザーのデータしか閲覧することができなかったが、今後はD〜Bの将来顧客と呼べる層のデータも可視化する(Aは既にブランド側に顧客データがある)。
@cosmeが某ブランドについてリサーチした結果によると、オンラインでそのブランドへアクセスしたユーザーは260万人、そこから商品情報などを閲覧したのは150万人だった。さらにブランドをフォローしたのは2万5000人、実際にサンプルなどで商品を体験したのが1万4000人、最終的に購入にいたったユーザーは1万2000人だった。
この数字を見るだけでも、情報を届け切れていない生活者がたくさんいると同時に、興味を持ってもらうために取るべきアクションがまだまだあることが分かる。
また、ユーザーのデータベースを可視化することで、既に愛用している顧客(A層)が他にどんなブランドを利用しているのか、いつ興味を持ったのか、購入したタイミングがいつなのかといったことも分かるようになる。
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