Pure StorageのCMOが語るB2Bスタートアップの「成長の作法」ロブソン・グリーブ氏インタビュー(1/2 ページ)

B2Bにおける顧客視点のマーケティングとは何か。コミュニティーやデータサイエンスをどう生かすのか。広告への投資はどうしているのか。いろいろ聞いてみた。

» 2019年09月24日 08時00分 公開
[織茂洋介ITmedia マーケティング]

 Pure Storageは企業向けITの中でもイノベーションが少ないといわれるストレージ分野で急成長を続けるベンダーだ。

 創業は2009年。安価で高性能なオールフラッシュストレージ製品を提供して頭角を現し、2015年に株式上場している。2018年の売り上げは10億ドル。Gartnerによるテクノロジー市場の評価レポート「Magic Quadrant」において、ソリッドステートアレイ(フラッシュストレージ)部門のリーダーに5年連続で選出されている。

 同社は製品のパフォーマンスの良さもさることながら、顧客視点つまり企業が求めるストレージ機能を徹底して追求し続けることで成功を収めた。好調な業績は顧客からの深い信頼のたまものでもある。

 顧客の推奨度を測るNPS(ネットプロモータースコア)においてPure Storageは2018年に86.6という高スコアを獲得している。これはNICE Systemsの「2018 NICE Satmetrix B2B NPS Benchmark」における標準スコア(24)の3倍以上という驚異的な数値で、B2B企業全体で上位1%に位置する。

 同社のマーケティング戦略についてCMO(最高マーケティング責任者)のロブソン・グリーブ氏に聞いた。

ロブソン・グリーブ氏
Pure Storage CMO。グローバルマーケティング戦略の立案と推進、市場での認知度強化、収益成長の実現を担う。Citrixの上級副社長兼CMO、Concur(2014年にSAPが買収)のグローバルマーケティングおよび顧客エクスペリエンス担当執行副社長、ソフトウェア分析会社のNew RelicのCMOなどを経て現職に就任。

顧客の課題をプロアクティブに検知する

――Pure Storageのこれまでを振り返って、急成長の要因をどう考えますか。

グリーブ氏 私たちはフラッシュメモリをエンタープライズ向けの製品に活用してストレージの世界にイノベーションを起こしました。しかし、テクノロジーだけが要因だとは思っていません。

 企業のIT部門は数多くのデバイスやプラットフォームの管理に忙殺されています。そのような負荷を私たちのソリューションを通じて軽減し、迅速に仕事ができるような環境を作りたいという思い、ビジョンがあるからこそ成長できたのだと思います。

――競合企業とどのように差別化しているのでしょう。

グリーブ氏 3つの領域で競争があると思っています。1つはDell EMCやNetAppのような従来型のストレージベンダー。2つ目がストレージのスタートアップ。3つ目は直接的な競合というわけではありませんが、お客さまがデータを保管する場所を提供するという意味ではクラウドベンダーも競合になり得ます。

 レガシーなシステムで大きな市場を持つ大手企業に対しては革新を訴求し、そのスピードを上げていくことが大切です。また、私たちはハードウェアを提供するベンダーですが、製品を販売して終わりではなくSaaSのように長期的な関係構築を重視しています。クラウドでも使いやすく、システムのアップグレードも簡単にできる。

 もう1つ、問題をプロアクティブに検知するという部分でも私たちは優れています。これも競合他社と大きく異なる点です。問題を認識して出すチケットの60%はわれわれの側から出ています。お客さま側で問題が生じる前に問題を解決するか、問題の所在を速やかに伝えられるようにしているのです。

 スタートアップとの戦い方としては、プラットフォームとして製品を提供することで差別化しています。さまざまなデバイスを1つのプラットフォームで統合管理できるようにして、お客さまの環境を複雑にしないようにしています。

――単に革新性を競うのでなく、あくまで顧客視点で使いやすい製品を提供する。そして売り切りでなく継続的に使い続けてもらう。いうなればカスタマーサクセスを重視してLTV(顧客生涯価値)を取っていくという戦略でしょうか。

グリーブ氏 まさに、その通りです。私たちのようなB2Bのビジネスでは、お客さまは問題を解決するために製品を購入します。お客さまが私たちの製品を活用してくださるのは、それによってIT部門の活動がよりスピーディーに実行できるからであり、将来に備えてさまざまな活動ができる環境を整えることが可能だからです。

 だから、お客さまとのエンゲージメントを通じて何が求められるかを先んじて考えることが私たちの基本的な立ち位置です。それを確実に実行することでLTVを最適化できると思っています。

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