キーワードは 「SHIFT」「MELT」「TILT」の3つだ。
デジタルが標準になった時代を生きるマーケターは、目の前のKPIに日々向き合うだけでなく、現在置かれている状況とこれから起きることについての理解を深めておく必要があるだろう。
本稿では2019年7月16日に開催された「PLAZMA 2019 KANDA」における一橋大学准教授の藤川佳則氏の講演「価値づくりのレンズ:ポスト・デジタル時代の経営論理」の内容を紹介する。
ビジネスにおける「当たり前」は日々変わり続けている。例えば1980年代に登場した「バリューチェーン」は今なお多くの人が用いるフレームワークだが、今日栄華を極める新興企業のビジネスの仕組みや成功の理由は、バリューチェーンだけで読み解くことができない。Uberは事実上世界最大のタクシー会社といえるが1台も車両を所有していない、Facebookでは日々膨大な動画や写真、テキストなどが発信されるがFacebook自身はコンテンツを作っていない。
現在、地球規模で起きているこうした変化を、藤川氏は「SHIFT(移行)」「MELT(溶解)」「TILT(傾斜)」という3つの視点で整理している。
世界経済はサービス化へと移行している。産業構造を第一次(農業)、第二次(工業)、第三次(サービス)で捉えた場合、どの国も例外なく、発展段階においては第三次産業の割合が増えていき、サービス産業が中心になっていく。
既存の業界定義が溶けてなくなり、産業の垣根が曖昧になる。例えば製造業のサービス化といわれる現象がこれに当たる。逆に、サービス企業がサービス提供のためにモノを作って提供するようなケースも出てきている。
未来の中心は北緯31度の北から南へ。これまで、イノベーションは北半球の先進国で起きていた。それが今、新しいことは南半球の新興国で起きている。北半球で少子高齢化が進む一方で、これまで貧困層が多かった南半球が変化している。
2030年には全世界70億人の3分の2に相当する50億人が中間層になるとの予測もある。例えば今モバイルバッテリーの最先端はケニアだ。かつては途上国と呼ばれインフラのない環境だったが、その環境から生まれたニーズに応えて製品化したものが先進国に逆輸入されるケースさえある。こうした動きは「リバースイノベーション」と呼ばれる。
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