日本を代表するB2Bマーケティングのエキスパート2人が、日本企業の弱点であるマーケティング領域の変革に必要なことについて語った。
「マーケティングオートメーション(MA)元年」と呼ばれた2014年から5年。当時と比較して日本のB2Bマーケティングは大きく成長を遂げたようにも見えるが、エキスパートの目から見ると、必ずしもそうとはいえないようだ。
2019年6月20日の「販促・マーケティング総合展」(リード エグジビション ジャパン主催)の基調講演に「日本のB2Bマーケティングは15年遅れている」と公言するシンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏が登壇。国内B2B企業のマーケティング改革が進まない原因と対策について、パナソニックコネクティッドソリューションズ社常務エンタープライズ本部長の山口有希子氏と語り合った。本稿では、白熱の議論のハイライトをお届けする。
B2Bマーケティング一筋約35年、世界のマーケティング市場にも明るい庭山氏は、日本のB2Bマーケティングの中で決定的に遅れている領域は「商談創出」であると断言する。
もちろんマーケティングテクノロジーは日々進化しており、利便性の高いツールも多数登場している。ただ、残念ながら多くの企業はそれらのツールを十分に使いこなせていない。
例えば、MAを導入してもメール配信ツールとしてしか活用できない企業がある。獲得したリードをホットリードに育てるという、MA本来の機能が生かされていないのだ。
モノやサービスが売れるようにするためには、まずそのための機会がないことには何も始まらない。どんな強打者でも打席に立たなければヒットは打てない。にもかかわらず、なぜ商談創出のためのツールを本来の目的に使うことができないのか。
最大の阻害要因は、日本企業に深く根付いた「文化」にあるというのが庭山氏の持論だ。
「そもそも、日本企業にはマーケティングという概念がありませんでした。B2B領域は特にその傾向が強い。MAを導入したものの全くデータを蓄積できていないというある企業に、なぜなのか聞くと、各部門からの拒絶が一番の理由だという。マーケティング部門そのものが異分子と見られているわけです」(庭山氏)
例えば、社内の名刺情報をデジタル化して一元管理したいとセールス部門に掛け合うと「自分の客には勝手に連絡するな」と拒否される。それならばと、展示会で獲得した名刺だけでも取り込もうと展示会担当の広報部門に話すと、「自分たちが苦労して獲得した名刺を横取りするな」といわれる。法務部門からは「クラウドに個人情報を置くな」とくぎを刺される。結果、MAに取り込めるデータがマーケティング部門の手元にないという事態に陥ってしまう。
各部門が自分たちの成果にこだわり情報を閉じてしまうのは、多くの企業で起こりがちな事象だが、本来売り上げは全員で作るものであるのは言うまでもない。各部門が連携し、全員で顧客課題の解決に取り組むために、まずは社内の文化を変えていく必要があると庭山氏は語る。
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