音声検索のアルゴリズムに対する準備、企業が今すぐ始めるべきこととは?音声検索の時代 後編

消費者の情報取得行動を企業の都合でコントロールするのは困難だ。音声検索になじんだ動線作りをどう考えればいいのだろうか。Yext幹部による特別寄稿後編。

» 2019年04月16日 08時00分 公開

 前編「音声検索の普及がビジネスに与える影響とは何だろうか 」で述べたように、消費者は音声検索に急速に適応してきています。その結果、検索する方法が根本的に変わろうとしています。

 しかし幸い、この新たなトレンドがもたらすチャンスを逃さないようにするための簡単な手順があります。この手順を理解するために、まず音声認識デバイスの仕組みを知る必要があります。

 簡単に説明すると、音声認識デバイスは全て、以下に挙げる3つの要素から成っています。

  1. ユーザーインタフェース(UI):デバイスとユーザーの間で情報をやりとりする方法です。音声認識デバイスにおいては、UIは、ユーザーがデバイスに話しかけることと、デバイスがユーザーに音声で答えを返すことです。
  2. 人工知能(AI):Amazonの「Alexa」やGoogleの「Google Assistant」がユーザーからの質問を解読し、最良の答えを決定するのに役立つアルゴリズムです。
  3. ナレッジグラフ:データベースのような頭脳といえるものであり、AIデバイスがこの世界に関して認識している情報の全てが蓄積されおり、これには企業に関してAIデバイスの知る情報の全てが含まれています。

ナレッジグラフを管理するということ

 企業がどんなに努力しても、GoogleやAmazonなど大手IT企業の音声認識デバイスのUIやAIに対し、大きな影響を与えることはできません。しかし、ナレッジグラフにならば、努力によって大きな影響を与えることができます。音声検索に対応したい企業は、ナレッジグラフ内の自社情報を管理すればよいのです。

 企業は、自社のビジネスに関する最も正しい情報を提供できる情報源です。そして、企業がナレッジグラフの情報を管理できれば、企業自身はもちろん、全ての当事者が利益を享受できます。音声認識デバイスは、サービスを提供する企業からの信頼性の高い情報を消費者に届けることができ、結果として正しい情報を手にできる消費者の利益にもなるのです。

 ただし、これを実際に実行するのは、簡単ではありません。音声認識やAIの機能を備えたデバイスが増え続けている状況では、企業の情報をある特定のデバイスだけに最適化して届けるだけでは不十分です。また、Googleなどが勝手に正しい情報を見つけてくれるはずだと期待するわけにもいきません。

 音声認識デバイスはそれぞれ、データを独特の方法で構造化しており、わずかに異なるデータセットや属性情報を優先して扱います。それぞれのデバイスおよび全デバイス上で自社の情報を正しく優先して扱ってもらうためには、適切な手順で自社の情報を正確に維持することが極めて重要です。

 米国や欧州の多くの企業では、音声検索などのAIを用いたの台頭に備えた対策として、デジタルナレッジマネジメント(DKM)を実践しています。DKMとは、消費者に提供する全ての企業情報を1つの情報源に集約し、この情報源を核として第三者サイト、アプリ、デバイス、自社のWebサイトなどで同期させる手法をいいます。

 適切なDKMソリューションを利用すると、企業はこれまで難しかったことでもできるようになります。例えばレストランチェーンは、季節限定メニューをGoogle Homeに追加して消費者にすぐに知らせることができます。不動産事業者は、自社のWebサイトで営業日をフレキシブルに変更し、次の土曜日は営業していることを消費者に知らせることができます。旅館であれば、常連客にFacebookでペット同伴が可能になったことを通知することもできるでしょう。

 DKMは、音声認識デバイスが消費者に提供する企業情報を管理することを可能にするとともに、その大変革を最大限活用することも可能にするのです。

寄稿者紹介

マーク・フェレンティーノ

マークさん

Yext チーフストラテジーオフィサー。製品開発、パートナーシップ、経営企画、戦略イニシアチブを担当。Yextに参画する以前は小売分析のNomi Technologiesを創業し、CEOを務めていたが同社を2014年に売却。その後は急成長していたハイテク企業の上級エグゼクティブとして活躍し、BMC SoftwareではSaaS担当チーフテクノロジーオフィサーを、Salesforce.comではチーフテクニカルアーキテクトを務めた。また、20年にわたってニューヨークのハイテク企業の創業に携わり、現在数社のスタートアップ企業にアドバイスをしている。


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