オフィス向けカタログ通販を軸に成長し、創業20年を超えたアスクルが抱く「危機感」の真意とは。
カスタマーエクスペリエンス(CX)プラットフォームを提供するジェネシス・ジャパンが2018年6月19日に開催したユーザーカンファレンス「G-SUMMIT TOKYO 2018」から、アスクル執行役員IT本部長兼カスタマーサービス本部長の秋岡洋平氏による事例講演の概要を紹介する。
1997年に創業者で社長兼CEOの岩田 彰一郎氏がPLUS(プラス)から独立して以来、オフィス用品の流通を変えてきたアスクル。メーカーからの直接仕入れで中間コストを削減し、カタログを通じて法人顧客に販売するビジネスモデルを軸に成長を続けてきた。2017年5月期の売上高は3359億円に上る。
創業20年を超えたアスクルだが、秋岡氏は「今後の事業への危機感を強く持っている」と語る。今日、物流の分野において、ビッグデータやAI、IoTなどを活用した技術革新がすさまじい勢いで進む。そうした中アスクルでは、B2Bのカタログ通販というビジネスモデルだけでは会社が廃れるという考えから、社内変革を急いでいるというのだ。
「もはや、今のビジネスにはB2B/B2Cという垣根も、リアルとバーチャルという垣根もない」と秋岡氏は語る。実際、アスクルの法人顧客に対して「アスクルと競合する他社サービスはどれか?」というアンケートを取ったところ、最も多かった答えは「Amazon.co.jp」、そして2番目は「100円ショップ」だった。ライバルはコクヨや大塚商会といったオフィス通販の同業他社だけではないのだ。
アスクルが現在注力しているEC事業には、中小企業向けの「アスクルWebサイト」と大企業の調達部門向け「ソロエルアリーナ」がある。商品ラインアップも拡充しており、従来のオフィス用品に加えて、工場や研究所で使う消耗品や、介護施設や医療分野への商品提供も始めている。さらに、Yahoo! JAPANとの資本提携によりB2C向けの「LOHACO(ロハコ)」も立ち上げた。
リアルとバーチャルの融合も進めている。その1つとしてセブン&アイと業務提携し、アスクルの顧客に生鮮食品を販売する取り組みを始めた。小売業と通販大手の提携や融合は、ソフトバンクグループとイオン、楽天とウォルマート、Amazonとホールフーズなどでも進んでいる。後れを取るわけにはいかない。
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