ブランドは顧客とどうつながるべきか。歌舞伎町のカリスマキャバ嬢にしてファッション雑誌のモデル、そして経営者でもある愛沢えみりさんに聞いた。
愛沢えみりさんは、一晩で3000万円超を売り上げたという伝説を持つキャバ嬢だ。18歳のときにキャバクラデビューし、20歳で有名店「プラウディア」に移りナンバーワンになった。カリスマキャバ嬢として名をはせる一方で、雑誌『小悪魔ageha』(2014年に休刊)専属モデルとしても活躍し、10〜20代のギャル層のファッションリーダーとしてのポジションも築いた。また、「かわいい服、かわいいものが大好き」というえみりさんは、それらを自分でも作ってみたいという思いから、2013年に女性向けアパレルブランド「EmiriaWiz(エミリアウィズ)」を立ち上げている。ネット通販専業から出発した同ブランドは順調に成長を続け、2016年5月には靖国通りに面した新宿の一等地にリアル店舗をオープンした。現在では約30人の従業員を抱える。
月商2億円規模のビジネスを切り盛りする起業家の顔を持ちながら、29歳になる現在もなお現役のキャバ嬢、モデルとして活躍中のえみりさんは、一言では言い尽くせない、奥行きのあるパワフルな女性といえる。当連載の趣旨であるマーケティングの視点からいえば、メディアの使い方が抜群にうまい。広告には一切頼らず各種SNSやブログを通じて、ビジネスの顔とパーソナルな顔をバランスよく見せながら、オンラインとオフラインそれぞれの販売チャネルに、巧みに送客しているのだ。
2013年7月、EmiriaWizがECサイトをオープンして最初に発売した商品はバッグだった。用意していた100個の商品は瞬時に完売。同時アクセスは7000人以上に達し、サーバがダウンするほどの人気だったが、実は告知はブログとTwitterで行ったのみだったという。
EmiriaWizでは、集客のためにバナー広告を出すことはほとんどない。ファッションブランドでは昨今、インフルエンサーを起用したタイアップ型のキャンペーンなども多いが、(えみりさん自身が強力なインフルエンサーであることを別にすれば)そうしたこともやっていない。
「広告を出したり有名人に洋服を着てもらったりするよりも、EmiriaWizというブランドを心から好きでいてくれるお客さまが洋服を着てアップしてくれた写真の方が、彼女たちのお友達には興味を持ってもらえると思うんですよね。横のつながりでファンを増やしていくのが理想だと思っています」
えみりさんの著書にこんな一節がある。
お客さんはいついなくなるかわからないし。他のお店に行くかもしれない。指名を変える事もある。だからえみりは、フリーのお客さんにも自分から付いて接客するんだ(中略)今いる大きな売り上げのお客さんも初めて来店した日がある。もしその時にえみりが席に着かないで他の子がたまたま座って気が合ったとしたら、えみりが指名される事はなかったはず(中略)だから、えみりはなるべく全員の席に着きたい。お客さんとの出会いを増やすためには欲張る事が大事なのかも――『キャバ嬢社長 歌舞伎町No.1嬢王 愛沢えみりとしての生き方』(主婦の友社)より引用
「顧客は分け隔てなく全て大事にする」というのは、歌舞伎町で学んだえみりさんのビジネス哲学といえるものかもしれない。そして、その大切な顧客との接点であるSNSを、えみりさんは何よりも重視している。
EmiriaWizの現在の主な集客ツールは公式Twitterと新宿スタッフTwitter、そして2016年からは公式Instagramの運用も本格化させている。効率的に運用するには1つのソースからマルチポストという方法を選択しがちだが、えみりさんは「TwitterとInstagramは見ている層が全然違う」と感じている。
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