中国向けクロスボーダーマーケティングについて、本間 充氏とテンセントIBG幹部が語る「China Internet Day」レポート(1/2 ページ)

中国にいる潜在顧客にいかにアプローチすべきか。中国ならではの特有の事情を踏まえ、今知るべきこととやるべきことについて、識者が語った。

» 2018年05月01日 07時30分 公開
[下玉利尚明タンクフル]

関連キーワード

中国 | TENCENT | マーケティング | 越境EC


 巨大な中国市場をどう攻略すべきか。『日経クロストレンド』と日本マーケティング協会は2018年4月19日、東京・六本木のアカデミーヒルズで「China Internet Day」を開催。ここでは、電通マクロミルインサイトCDOの本間 充氏と中国のインターネット企業Tencentの国際事業部であるInternational Business Group(以下、テンセントIBG)の幹部らが登壇し、日本企業のマーケティング担当者に向けて、中国市場特有のインターネット事情を踏まえたマーケティング戦略の重要性を語った。本稿ではその概要を紹介する。

中国でビジネスをするなら「ローカル」について真剣に考えるべき

 日本の製品やサービスを中国市場に売り込みたいと考える日本企業は多い。では、中国市場へのマーケティングをどのように展開すべきか。「中国のインターネット事情とその活用術」と題して講演した本間氏は、「中国の現地の人に向けたマーケティングと、訪日観光客など日本に来る中国人向けのマーケティングの2種類を考えることが大切」と語った。いずれも重要なのは潜在顧客に対するコミュニケーションだ。特に中国人観光客に対しては、中国にいる段階からコミュニケーションを設計することが重要になるという。

 それでは、中国の現地にいる潜在顧客にどうアプローチすべきか。中国市場の中国人にリーチするコミュニケーションツールとしてインターネットが重要であることには間違いない。ただし、中国と日本では使われているサービスプラットフォームやアプリケーションが全く異なる。

 さらに、インターネットのトレンドは、時々刻々と変化している。自国の情報ですら、常にアップデートするのは容易ではない。他国の情報となればなおさらだ。多くの日本企業が中国でビジネスをしてはいるが、現地法人を持たない企業もあるし、現地法人からの情報提供だけで中国の最新トレンドを全て把握するのはなかなか難しい。そこで、「中国のインターネット事情に精通しているパートナー企業とウィンウィンのパートナー関係を構築して、ビジネスを進めるしか道はない」(本間氏)ということになる。

 多くの日本人は、インターネットはグローバルなインフラであり、同じプラットフォームが全世界で同じように使われていると思いがちだが、実はそうではない。例えば、検索サイトといえば、日本ではYahoo! JAPANやGoogleが真っ先に挙げられるが、中国や韓国ではその比率は低く、ロシアでは全く違う検索エンジンが使われているという。本間氏は「グローバルビジネスがしたいなら、ローカルについて真剣に考え、ローカライゼーションを理解しないといけない。コミュニケーションはローカルなので、その国に合わせたプラットフォームやサービス、ツールを使うのがポイントだ」と述べた。

本間 充氏 本間 充氏

訪日外国人向け市場にはまだ伸びしろがある

 海外に有望な市場があるからといって全ての企業がそこに進出できるわけではない。では、国内でビジネスを展開する国内企業なら、海外の顧客を意識しないでいいかといえば、そうではない。

 Mastercard調査「2016年度世界渡航先ランキング」によると、1位はタイのバンコクで東京は9位。しかし、観光客数を人口で割ると、バンコクは2.3。つまり人口の2倍以上の観光客が来ている。これに対して東京は0.8倍にすぎず、まだまだ増える余地があると考えられるという。つまり、「海外進出を考えていない企業でも、今後は必然的に海外の顧客を相手にビジネスをすることになる。中国への進出だけでなく、訪日中国人観光客向けのマーケティングも考えるべき」(本間氏)ということになる。

 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。東京都が試算したその直接的効果は都内だけで3兆3000億円、全国では5兆2000億円に及ぶ。そのおよそ半分は中国人観光客によってもたらされるという見方もある。そうであれば、どのようなビジネスであれ、日本にいながら中国人にどう向き合うかを考えなくてはならない。

 本間氏は、「中国人向けでもグローバル向けでも、ターゲットの明確化、ターゲットの理解、ターゲットにふさわしいコミュニケーションというマーケティングの基本原則は変わらない」と強調する。後は、市場に合った形でそれを愚直に実行するだけであり、信頼できるビジネスパートナー選びがその第一歩ということになりそうだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

関連メディア