――Adobe Experience Managerを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
石川 そもそも当社のような大規模のWebサイトにおいては、もともと選択肢が限られていたという事情もありますが、決め手となったのは、ページ単位だけでなくコンポーネント単位での素材管理ができることでした。Adobe Experience Managerでは、同じコンテンツを複数チャネルで再利用できる仕組みがあります。ページの一部で変更が発生しても、マスターページの中の共通コンポーネントに変更を加えれば、共通コンポーネントを含む全てのコンテンツにコーディングレスで変更を反映させることができるようになります。
永山 Webブラウザごとに表示の崩れがないかといったことは1つ1つ確認しなければなりませんが、テストの負担が減るので、リリースまでの時間はぐっと短縮できることになります。キャンペーンのページなどでは、掲載期限のある画像の管理が大変でしたが、これからは更新漏れの確認の負担が減りそうです。
石川 ページの更新スピードが早くなれば、意思決定が早くなりますし、お客さまとのコミュニケーションをどうするかという本質的なことを考える時間を取れるようになります。今までは、やりやすいことだけをやっていたのが、本当にやらないといけないことができるようになる。
――ツールを変えると、作るコンテンツも変わってくるかもしれませんね。
石川 パーソナライズしたマーケティングキャンペーンを展開するためのコンテンツになってきます。また、スピードも上がるはずです。コンテンツ制作では外部のパートナーに協力いただいていますが、「コンテンツベロシティー」を実現したいと説得しました。重複の多い作業にコストをかけず、もっとたくさんのコンテンツを早く作るという考え方です。
永山 これまで、Webサイトの仕組みを大きく変えることを「リニューアル」と呼んでいましたが、これからは、常に変化することが当たり前のWebサイト運用に変わります。今後期待するのは、同じコンテンツを複数のチャネルで再利用するための機能です。1つのコンテンツ素材を、Webだけでなくメールマガジンやバナー広告、Facebookなどのソーシャルメディアへと、効率良く展開したいですね。
――Adobe Experience Cloudの一部である「Livefyre」を導入し、UGC(ユーザー生成コンテンツ)をANAソーシャルメディア公式アカウントページやANAのお知らせページで利用しています。UGCがコンテンツストックに加わると、顧客とのコミュニケーションはどう変わるのでしょうか。
石川 マーケティングキャンペーンでコンテンツ配信を最適化するには、前提として大量のコンテンツ素材が必要になります。お客さまが発信するコンテンツは、プロが制作したものにはない味があります。それを生かしてオウンドメディアの中で双方向のコミュニケーションができるのは魅力です。ハッシュタグの付いたコンテンツは、旅行者のリアルな動きと合致しています。また、計画中の訪日旅行者向けのポータルでUGCを使えば、在住者にはない旅行者独自の視点のものになるでしょう。より幅広いコンテンツの配信ができるようになると思います。
――最後に今後の展望について聞かせてください。
石川 お客さまが置かれている状況に応じて必要なコンテンツを提供することは、手間暇がかかりますが、最終的にはお客さまの利便性に貢献すると思います。今までよりも的確に状況を把握しつつ、今後もやりたいと思っていたことをちゅうちょせずに進めていきたいです。
冨永裕子
とみなが・ゆうこ フリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタント。2つのIT調査会社でエンタープライズIT分野におけるソフトウェア分野の調査プロジェクトを担当する。その傍ら、ITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトも経験する。新興領域、テクノロジーとビジネスのギャップを埋めることに関心あり。
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