訪問なし、インサイドセールスのみで販売を完結させることは可能か?【連載】営業の生産性を向上させる「インサイドセールス」活用術 最終回(1/2 ページ)

前回の記事では、インサイドセールスを支える各種ツールをご紹介しました。最終回である今回は、具体的な取り組み事例を通して「訪問しない営業」の魅力をお伝えできればと思います。

» 2016年12月14日 07時00分 公開
[岩永信義イノベーション]

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 当社イノベーションでは、月額3万円のあるクラウドサービスの販売に当たり、インサイドセールスに取り組んでいます。そして、インサイドセールスの導入によって現在、一切訪問することなくお客さまへ販売することができています。

 低単価の製品やサービスの販売に際しては、売上高に比べて営業活動に手間と時間をかけ過ぎてしまうことが問題になります。

 イノベーションも以前は、営業担当者がリスト作成からアポイント獲得、その後の訪問や無料トライアルの提案までを担当し、無料トライアル実施まで行くと担当が替わり、有料化担当がフォローするという流れになっていました。この作業の流れには、

  1. 営業が属人的になる
  2. 無料トライアル獲得までに時間と費用がかかる

という、2つの大きな問題がありました。

 まず1つ目。どのようなリストを作り、どのようなトークでアポイントを獲得し、どのように提案して無料トライアルを実施してもらうのか、それぞれの営業担当が独自の手法で活動しているのが実態でした。そのため、担当者ごとに成果のばらつきもありました。さらに、成果を上げている社員が人事異動などで担当が変わると、チーム全体の成績がダウンするという状況を繰り返していました。

 2つ目の問題では、無料トライアル提案のために、場合によっては往復2時間かけて訪問しているケースもありました。当たり前ですが、無料トライアルからの有料転換率は100%ではないため、月額3万円の割には、明らかに時間と費用をかけ過ぎていました。

 そこで、上記の2つの問題を解決するため、インサイドセールスの導入を推進しました。

 以前は、営業が担当していたリスト作成やアポイント獲得、訪問、提案という作業をインサイドセールス担当が受け持つこととし、さらに、「リスト作成、アポイント獲得」を担うアポイント獲得担当と「提案、クロージング」までを実施する商談担当の2つに分けて実施しました。役割を2つに区分して実行したポイントは下記の2点です。

1. アポイント獲得と商談の切り分け

 担当者をそれぞれの作業に分けることで、やるべきことが明確になります。例えばアポイント獲得担当は、「商談担当が商談しやすいアポイントを、どうしたら多く獲得できるのか」だけを考えて、インサイド業務を改善していくことができます。当社の例ではチーム内での改善ミーティングなどの結果、理想的なアポイント獲得用のトークスクリプトを作成するに至りました。現在ではアポイント獲得数が多く欲しいときには、このトークスクリプトを使用して外部のコールセンターにも委託できるようになり、インサイドセールス導入前と比較して、生産性が大幅に向上しました。

2. 全ての商談をオンライン化

 これまでは移動時間に、多いときで往復2時間も費やしてしまっていましたが、訪問を一切やめ、全ての商談をオンライン化することで、移動時間をゼロにすることができました。さらには、従来首都圏のみに限定されていた営業範囲が、一気に日本全国に拡大しました。

 オンライン商談の導入効果は具体的な数値にも現れています。インサイドセールス導入前の営業担当者の活動時間割合は、下記のように大幅に変化しました。

インサイドセールス導入前 導入後
商談 26% 65%
移動時間 31% 0%
アポ取り 29% 0%
クロージング 7% 25%
社内作業、会議他 7% 10%
イノベーション調べ(2016年)

 インサイドセールス導入後には、移動時間とアポ取り時間が削減できたため、営業1人当たりの商談時間が約2.5倍になりました。具体的には営業担当者1人につき1日2商談だったものが、5商談に増加しています。ちなみに、訪問営業をオンラインに変えることで案件化率が下がるのではないかと心配をしていましたが、訪問時案件化率が46%であったのに対し、オンライン商談時の案件化率は41%と、心配していたほどには落ち込むこともありませんでした。

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