台湾は海外進出を考えるEC事業者には有望な地域ですが、日本と事情の異なるところもあります。その点を中心に亞星通(STAR TO ASIA)執行役員の安田和秀氏に話を聞きました。
前編「台湾で日本流ECを成功させるためにできること、するべきこと」では、台湾でEC事業を円滑に進めるポイントについて、私自身の体験を踏まえてお話ししました。後編は、私が代表を務めるマイクロアドの台湾支社「台湾微告(※1)」のパートナー企業で日本企業の台湾進出を支援している亞星通(STAR TO ASIA)執行役員の安田和秀氏に、台湾で単品通販モデルを進めるに当たってのコツや日本との違いを語ってもらいます。
※1「微告(ウェー・ゴアウ)」
――日本と台湾で通販市場にはどのような違いがあると思われますか。
安田 日本と台湾の通販市場(特にWeb)で大きく異なる点の1つが、”ECモールで購入する文化”である点です。台湾の通販企業の多くは、「PChome」や「MOMO」といったECモールで商品を売ります。以前、台湾の通販企業から「ECモールを介さず直接販売するなら、メディアレーション(以下MR/※2)5.0が保証できないなら広告を出したくない」と言われました。
※2メディアレーションとは、通販広告における効果測定の指標で、売り上げに対して広告費をいくら掛けたかを表しています。ROAS(広告費用対効果)と同義だが百分率(パーセント)ではなく小数で表す。
――MR5というと、例えば100万円の広告費を掛けたとすると、500万円の売り上げを出さなければならないということになりますね。単品通販は繰り返し購入が前提で、商材の単価もそう高くありませんから、初回購入だけでこれを実現するのは奇跡的というかほぼ不可能ですね。なぜ、そうなってしまうのでしょう。
安田 台湾では、リピート購入によって利益を生み出すという考え方がないので、当然そのための資本も準備していません。故に、初回購入だけで即時に利益を生み出すモデルではないと成り立たないというわけです。しかし、この点は、われわれにとって有利にも働きました。なぜなら、台湾ではWeb広告に出稿する企業の多くはブランディングや店舗誘導を目的としているため、直接購入(ダイレクトマーケティング)を目的とする競合企業は少ないからです。また、コミッションの掛からない自社通販は松尾さんがおっしゃる通りノウハウが蓄積しやすく、売り上げに直結しやすい。このため、通販支援事業を開始して数年になりますが、いまだにMR1.0〜1.5で新規顧客の獲得ができています。この数値は日本の市場と比較するとかなり高く、通販企業にとっては魅力的だと思います。
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