コンテンツには、下記にまとめたように幾つかのタイプがある。
チップス型/ティーチング型 | 業務などに役立つ豆知識やノウハウ、ヒントを発信するコンテンツ |
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ソリューション型 | 課題解決に結び付く具体的方法を示すコンテンツ |
リポート型 | 展示会のリポートや開発や製造の現場を伝える取材記事など |
トピックス型 | 自社の新サービスの告知、製品のリリース情報など |
イベント型 | イベントやセミナーの開催、展示会出典などのお知らせ |
トレンド型 | 旬のキーワードを狙い、時勢を先取りした情報を提供するコンテンツ |
これらの中から、どれか1つ最適解を見つけるというよりも、さまざまなタイプのコンテンツを使い分け、適宜織り交ぜながら配信していく方がよいだろう。コンテンツが紋切り型になると飽きられやすいし、読者が偏ってしまう可能性もある。故に、内容そのものもフォーマットも、固定化せずに常に目新しさを追求していくべきだと考えている。
コンテンツの制作体制や、そこに充てるべき人数は、配信頻度によるところが大きい。 これまで営業が面談に出向いていたペースが、おおよそ適切なコンテンツの配信ペースだとイメージしてみよう。購買サイクルが1、2年と長い製品であれば、営業が面談に出向くペースは一般的に1カ月に1、2回となるので、コンテンツの配信も同様に1カ月に1、2回でよいだろう。購買サイクルが数カ月というスパンのものであれば1週間に1回のメール配信を目指したい。
そのために、コンテンツは何本必要だろうか。1回のメール配信でコンテンツ1本というのは内容が薄いので、2、3本のコンテンツを同時に配信できることが望ましい。例えば2500文字程度のブログコンテンツを書き上げるのに、個人差はあるが5、6時間は要する。
1人で書き続けるのが難しければ、何人かで分担する、あるいは外部の専門性の高いライターに依頼するとよいだろう。また、編集会議を行い「Googleアナリティクス」などを見ながら漏れや抜けがないかを確認し、狙うべき検索キーワードを決定していく。
コンテンツがレバレッジを発揮し始めるのは、30本を超えたあたりからだ。
もし1週間に1本のペースでコンテンツを作成するとしたら、30本を書き上げるのに半年以上かかることになる。成果を短期的に求められる企業であれば、公開時点に30本用意できている状態が望ましい。
しかし、その準備に時間がかかり過ぎてしまっては意味がない。コンテンツは一度つくって終わりではなく、中長期的に続けていくことが重要だ。
基本的には、「リードの獲得、商談、売り上げに直結したコンテンツ」は何かを把握する必要がある。
そのためにも、第3回「コンテンツをフル活用して『デジタルでおもてなし』を実現する方法」の記事で触れたMAツールはもはや必須となっている。MAツールを導入することで、まず見込み客ごとの接点を長期的にトラッキングできるようになる。
実際の売り上げに結び付くのは商談の開始から1年後か2年後かもしれない。その結果をフィードバックして次のマーケティング活動に生かしていくために、MAツールとSFA(営業支援ツール)を連係させる仕組みも大切だ。
コンテンツマーケティングは、自社の製品情報を一方的に伝えるような従来型のプロモーションとは大きく性質が異なる。これまでの固定概念や慣習にとらわれず、正しい理解と心構えのもとで取り組んでいただきたい。
まず自社の情報を許される限りオープンにして、相手にとって本当に価値のある情報を届けることが大切だ。コンテンツを通して信頼を獲得するためには、ギブ&テイクではなく、ギブ&ギブ&ギブの考え方にスイッチしよう。
コンテンツにおいて重要なのは、情報の公平性だ。「アドボカシーマーケティング」(自社の利益より顧客の都合を優先する考え方)という言葉もあるように、顧客の利益を第一に考え、自社の製品で他社に劣っている部分があれば、その情報も包み隠さずオープンにする。一見マイナスに思えるかもしれないが、正直であることは信頼関係をより強固にしてくれる。
他社と同じことを配信しても、相手に新しい発見は与えられない。たとえ大まかな方向性は似ているとしても、何か1つでも自分なりの考え方や感じ方、提案を入れることでコンテンツの存在感は一気に高まる。
コンテンツマーケティングの目的は、自社サイトをメディア化することではない。マーケティング活動の一環として、顧客を生み出し、売り上げを生み出すことが最終的なゴールだ。前述したTOFU、MOFU、BOFUのように目的意識を持って取り組んでいただきたい。各段階で小さなゴールを設定し、顧客創出という大きなゴールへ確実につなげていくことが大切だ。
お客さまが本当に求めているのは製品というモノではなく、課題を解決してくれるコト(ソリューション)だ。この認識に立てば、製品の本当の価値をお客さまの視点から考えられるようになるだろう。そこから自ずと、コンテンツのテーマも見えてくるはずだ。
「コンテンツファースト」が求められる時代。テキストのみならず、ムービー、インフォグラフィック、イメージ、スライド、ウェビナーなど、さまざまな手法がコンテンツとなり得る。また、Webの中にとどまらず、オフラインで実施するセミナーやイベントも、広義ではコンテンツである。
コンテンツマーケティングの実践者は、お客さまにリーチするためのありとあらゆる手段を考えるべきだろう。コンテンツは、これまで営業が行っていたコミュニケーションそのものだ。優秀な営業マンたちは、状況によってトークを使い分け、さまざまな情報を、タイミングを見極めながら相手に喜ばれる効果的なかたちで提示してきた。手を変え、品を変え、決して通り一遍の商談ではないはずだ。
今は営業が効かない時代だといわれる。かつて、売れる商品を支えてきたのは優れた営業マンたちだった。これからは、コンテンツがその役割を担っていくだろう。私たちはこれから、コンテンツやMAという新たな武器を駆使して、優れた営業マンが実践していたことをデジタルでやってのけようとしているのだ。
マーケティング活動にもROIが求められる今、現場の意識は年度ごとの予算と成果、目の前のコストにとらわれがちだ。もちろんコスト意識は重要だが、購買プロセスそのものが長期化する中では、中長期的な視点で取り組める施策がますます重要になっていく。これからは、企業の文化として、コンテンツマーケティングの定着を目指すべきだと考える。
最初はスモールスタートで構わない。1つの事業あるいは製品に絞り、成功事例をつくってそれを横展開させていくかたちがよいだろう。幸いにも、コンテンツマーケティングの成功を助けるデジタルインフラは、ここ数年で飛躍的に発展を遂げている。今、始めない手はない。
垣内良太 ワンマーケティング BtoBマーケティング事業部 プロデューサー。1974年生まれ。2002年、たかアート(旧社名)に入社。会社案内、営業ツールの企画制作をベースに展示会、Webなどさまざまなマーケティング施策の提案と解決策を提供。2010年より、BtoB企業にもマーケティングの重要性を感じ、BtoB企業に特化したサービス提供を実施し始める。2013年5月に、BtoB企業向けサービスにフォーカスしていくためにも、ワンマーケティングとして社名を変更。それを機にBtoBマーケティングに関連したコンテンツマーケティングを日々、実践研究中。現在、BtoB企業の顧客創造に貢献するためのマーケティング活動全般の支援を行なっている。
連載バックナンバーはこちら⇒【連載】BtoB企業のためのコンテンツマーケティング入門
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