スマホ vs. タブレット、ユーザーの行動特性から考えるマーケティング戦略ロケーションも重要

これまで「PC対モバイルデバイス(スマートフォン/タブレット)」という図式で語られることが多かったが、「スマートフォンとタブレットにおける消費者行動の相違に着目し、マーケティングや広告戦略を考えるべき」と、訴えている。

» 2013年05月24日 14時07分 公開
[岩崎史絵,ITmedia マーケティング]

 スマートフォンやタブレットなど、モバイルデバイスの利用率が年々伸びている。デバイスの利用率は、これまで「PC対モバイルデバイス(スマートフォン/タブレット)」という図式で語られることが多かったが、Search Engine Watchが5月22日に掲載した記事“Smartphone vs. Tablet Commerce: 3 Essential Behaviors You May Be Overlooking”(「スマートフォン vs. タブレット:見逃しているかもしれない3つの本質行動」)では、「スマートフォンとタブレットにおける消費者行動の相違に着目し、マーケティングや広告戦略を考えるべき」と、訴えている。

 この考察は、広告会社のxAd、Telmetrics、そしてNielsenが実施した“Mobile Path to Purchase”(購買に直結するモバイル・パス)という調査結果に基づいたもの。「スマートフォン/タブレットユーザーの購買行動の傾向」「ロケーションの影響度」「スマートフォンとタブレットで同じ傾向下にある行動」という3つの視点から論じている。

 まず、「スマートフォン/タブレットユーザーにおける購買行動の違い」についてだが、顕著な事柄としては、スマートフォンユーザーの68%が「直接購入する」という回答なのに比べ、タブレットユーザーは38%にとどまっていることが挙げられる。

 ちなみにスマートフォンユーザーの場合、購入行動のトップ3は、「直接購入(68%)」「モバイルデバイスを通じての購入(16%)」「PC経由での購入(9%)」だという。対するタブレットユーザーは、「直接購入(38%)」「モバイルデバイスを通じての購入(28%)」「PC経由での購入(26%)」であり、オンライン購入の傾向が強い。また、タブレットなどで商品情報を入手し、実際の購入はPCの方で完了させるというケースも多い。よって、モバイル広告の効果測定にしても、正確を期するなら、デバイスをまたがったコンバージョンをトラッキングすることが望ましい。

 またスマートフォンユーザーの大半が、実際の店舗に足を運び、商品を購入する傾向にあるということから、スマートフォン向け広告としては、店舗の場所や電話番号、クーポンや期間限定還元セールのお知らせといった、店舗へ向かわせるための広告を展開するのが有効だとみられる。

 次に「ロケーションの影響度」について。スマートフォンが、常時持ち歩いて利用するツールであることに比べ、タブレットは一般的に、自宅/オフィスでの利用が多いという傾向がある。実際、タブレットユーザーの3分の2は、ロケーションを頭に置いて情報収集や閲覧、リサーチを行い、そのうち45%は、現在地の半径5マイル(約3.2km)以内を念頭に置いているという。

 一方、スマートフォンユーザーは、現在地にこだわることはないものの、5割近くのユーザーは店舗や企業の所在地、行き方を検索したり、また20%のユーザーは電話番号を探したりするために利用している。割合はややスマートフォンユーザーに劣るとはいえ、実際タブレットユーザーの3分の1も、ロケーションに関係した情報を広く収集していることを考えると、エンゲージメントの引き金となるロケーション情報は、広告主としては無視できない。「すぐに行ける、物理的に近いロケーションかどうか」は、必ずしも重要ではないが、「位置情報」ということでいえば、モバイルデバイスにおける広告/ターゲティング戦略の本質的な部分を担うと考えられる。

 最後に、スマートフォントタブレットで「ほぼ同じ」という利用行動は何か。

 今回の調査で明らかになった「過去30日間において訪問したアプリ/Webサイト」によると、実はスマートフォン/タブレットの間でほとんど違いはない。スマートフォンの方が、「特定のブランドサイト57%」「検索エンジン46%」「比較/ユーティリティ29%」「地図&ナビゲーション28%」「地域情報13%」のために利用しているとのことだが、タブレットの方も「特定のブランドサイト58%」「検索エンジン51%」「比較/ユーティリティ29%」「地図&ナビゲーション21%」「地域情報15%」となっている。記事では、「ブランドのアプリやWebサイトは好んで利用するものであり、検索エンジンは、モバイルデバイスにとって本質的なツール」と、結論付けている。

 多くのユーザーは、いまだにブラウザでブランドサイトを閲覧しているが、そうかといって未来永劫ブラウザベースのエクスペリエンスを求めているわけではない。新たなユーザーエクスペリエンスを実現するモバイルアプリケーションを提供できれば、マーケティング効果は高い。また、利用行動の傾向からいえば、アプリの提供は、スマートフォン/タブレット両方に訴求できる可能性が高いのも、大きなポイントだ。

 モバイルマーケティングでは、「1つのデバイスでオンライン購入を完結させる」ことを目的としても、効果は期待できない。スマートフォンユーザーには店舗への誘導を促す施策、タブレットユーザーには、PCと併用したコンバージョンを測定して効果を把握しつつ、ロケーションや電話番号など、位置情報を訴求するクリエイティブを表示し、店舗への誘導を促そう。自社ブランド/店舗の訴求手段としては、アプリの開発/提供が有効だと思われる。

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