ループス・コミュニケーションズの岡村健右氏が解説するゲーミフィケーション入門。モチベーションの喚起はビジネスを成功に導く鍵になります。そこで登場するのがゲーミフィケーションなのです。
本連載は「ゲームの力が会社を変える -ゲーミフィケーションを仕事に活かす-」(日本実業出版社)の第1章を2回に分けて転載したものです。
では、なぜ最近になって急に「ゲーミフィケーション」という言葉が脚光を浴びているのでしょうか。
1つには、今までよりいっそう従業員を満足させる必要が生じてきたからです。
高度成長時代には、一度入社したら定年まで同じ会社に居続ける終身雇用の働き方が一般的でした。会社に依存した生き方が当たり前であり、社員は会社に対する帰属意識が高く、会社に忠誠を尽くして働いてきました。
ところが近年、長きにわたる不況や国際競争、円高などにより、企業は正社員を雇い続ける余裕がなくなってきました。それに伴い、雇用形態も次第に変化してきました。正社員の残業規制、早期退職制度、新卒採用の中止、パートタイマーや契約社員の増加などが目立ってきたのです。
それにあわせて、社員の側も1つの会社に終身雇用を期待せず、短期間での転職を繰り返すように変化してきました。終身雇用制が崩れた結果、一生会社に居続けることが当たり前ではなくなってきたのです。そのように転職が当たり前になると、社員が会社に尽くすことも当たり前ではなくなります。
以前は、会社と社員は一心同体でつながっていました。ところが時代が変わり、社員が会社に対してメリットを感じないとつながれない状態になってしまったのです。分かりやすいメリットといえば給料ですが、お金だけでつながるというのは寂しいものです。理想は、会社と社員は同じ目標に向かって邁進する状態ですが、社員の心は次第に会社から離れつつあるのです。
そんな中、社員がその組織に所属していることに誇りを持っている会社があります。
本書で多数紹介していますが、そのような会社の社員は、みんな楽しんで、しかも自主的に会社のために働いているのです。その違いは何でしょうか。
その仕掛けが、実は「ゲーミフィケーション」なのです。
企業が成長するためには、社員に貢献してもらう必要があります。それには、従業員のやる気を引き出す必要があります。そして、やる気を引き出すためには、社員に単に給料を渡すだけではなく、社員が会社にいてうれしい、楽しいと感じるところまで引き上げる必要が出てきているのです。そのために大きな力を発揮するのがゲーミフィケーションです。
社員のやる気につながる仕掛け、ゲーミフィケーションの具体的な事例については、後の章で述べたいと思います。
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