今夏、AKB48のメンバーたちが野菜のコスチュームを着て、『野菜一日これ一本』を宣伝した広告を覚えている人も多いのではないだろうか。口コミでの波及も広がった結果、7〜9月の売り上げが前年同期比36%増と大きな効果をあげたPR戦略の裏側をカゴメの鶴田秀朗氏が解説した。
テレビやインターネット、店頭などで日々展開される商品やサービスの広告。特に多くの人が利用する消費財の場合、さまざまなメディアを使って大々的に行われることも少なくない。
そんな大規模キャンペーンの代表例が今夏、AKB48を“AKB48野菜シスターズ”として広告塔に起用したカゴメ『野菜一日これ一本』のキャンペーンだ。AKB48のメンバーたちが野菜のコスチュームを身に付けて登場するテレビCMや店頭POPなどを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
結果的に『野菜一日これ一本』の売り上げ(7〜9月)を前年同期比36%増と大きく伸ばしたこのキャンペーン。カゴメのコーポレート・コミュニケーション本部広告部の鶴田秀朗課長がその裏側を解説した。
鶴田 本日は今年7月〜9月まで約3カ月間展開した、カゴメの『野菜一日これ一本』の広告キャンペーンについて紹介します。
『野菜一日これ一本』のコンセプトは「不足しがちな野菜の栄養を、手軽にしっかり補うことができる野菜100%ジュース」です。『野菜一日これ一本』は350グラム分の30品目の野菜を200ミリリットルに濃縮したもので、砂糖や食塩は一切使用していません。350グラム分の野菜というのは、厚生労働省が推奨している(参照リンク)成人が1日に必要とする野菜の量です。しかし、実際にとれている量は平均290グラムほどと不足している現実があるので、「手軽にとれる野菜ジュースで野菜不足を解消しましょう」ということです。当初は25種類の野菜を使っていたのですが、「キリ良く30品目と言いたいよね」ということで、この春から30種類の野菜にパワーアップしました※。
『野菜一日これ一本』は2004年終わりごろに発売して、初年度(2005年)の売り上げが100億円、2年目に150億円弱とヒットしましたが、2008年や2009年には100億円前後に落ちてしまっていました。
そこで『野菜一日これ一本』をロングセラー商品として育てていくため、テコ入れをしたいと考えて、2010年はAKB48を使った広告を展開しました。その広告が好評で、売り上げが拡大に転じたので、2011年も継続して広告キャンペーンを行うことになりました。
2011年の広告キャンペーンは本当は5月から始めたかったのですが、東日本大震災の影響もあって、2カ月遅れて7月から始めました。
メインターゲットは20〜40代の男女ビジネスパーソンで、彼らの商品認知と飲用意向を向上させることが目的です。「野菜摂取量が不足している」と言いましたが、実は年配の人はそれほど不足していません。働き盛りの人はストレスや飲酒、喫煙、睡眠不足などによって、野菜の栄養を吸収できていない傾向にあるので、一番不足しているんですね。食生活も乱れているので、こういう人たちに飲んでいただきたいと思いました。
では、いつ飲んでもらうか。ビジネスパーソンは昼、ハンバーガーや牛丼、ラーメンといったもので済ましがちで、栄養不足になってしまうので、そこに気付きを起こすことを狙おうと考えました。
そして最後にどのように言うかということですが、母親目線の説教ではなくて、友達目線のメッセージを心がけました。野菜ジュースだと、先生や母親が子どもに「栄養とりなさいよ」と説教するようなものにどうしてもなりがちなのですが、友達が温かく思いやるような形でメッセージを伝えることで好きになってもらいたいと思いました。
昔の広告では、どちらかというと静的、左脳的、理性的なメッセージが多かったです。「350グラムの野菜をとろうよ」というような訴求ですね。それを動的、右脳的、明るく元気で、無理しなくていいんだよ、というメッセージに変えようと思いました。
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