そのために必要なのは、まず品ぞろえの豊富さである。「タマネギのない八百屋なんて受け入れてもらえない」と高島社長が言うとおり、食品ネットスーパーを標榜する以上、通年で販売できる仕入れのネットワークを構築することが、顧客満足のためには必要不可欠だ。しかし、それをカバーするには非常に広い範囲で産地を開拓する必要がある。現在オイシックスと取引のある農家は全国に約1000軒あり、それが安定した商品供給をもたらしている。
その次に必要なのは、商品のクオリティだ。同社は、商品の価値自体にバリューを設定し、農家の人たちにも「オイシックスの基準」を守ってもらうように徹底する。例えば、お客様の声。「おいしかった」という喜びの声はもちらん、「○○さんのほうがおいしかった」というネガティブな感想もすべて農家に伝える。時にはおいしかったと言われたほかの農家の商品を送って、参考にしてもらうことさえあった。
こうしたやり取りで農家から怒られることもあった。だがこれまでは、消費者と農家の間には中間業者が入っていたため、消費者の声が直接農家に届くことは少なかった。オイシックスが食べ手と作り手を直接結ぶことで、消費者、農家、メーカーなどあらゆる立場がメリットを得られるようになる。
同社の中で、顧客満足とは「“Oisix”っぽい」サービスと表現されている。Oisixっぽさとは「期待を上回る驚きをお客様に与えること」と定義している。
例えば、普通に食べてもおいしいけれど、さらにこれを混ぜるともっとおいしいという提案や品数の豊富さ、そして味のおいしさを保証し、さらに、生産者からのコメントが手書きでついてくる――。同社が仕掛けるサプライズと位置付けている。期待を超える喜びを与え続けることが、オイシックスの成長を支えてきた一因なのである。
顧客満足のためには、サービスのパーソナライズ化も重要だ。同社は、見込み客に対しては基本的に週2回、既存客に対しては週3回、それぞれメールを配信しているが、同じ内容のメールを一斉に送ることはしていない。
今、ネットマーケティングの流れは、プロフィール(属性)からプリファレンス(趣向)に変わっている。つまり、性別や年齢層、居住地域といったプロフィールごとにマーケティングを展開するのではなく、過去に買った製品や購入頻度などから、その人の好みに合ったコンテンツを提供するという方法だ。
Oisixからのメールは、そのような分類で送られているだけではなく、注文した農家からのメッセージやレシピなども届く。「データベースマーケティングは非常に有効」(高島社長)だが、それは決して独善的なものではなく、ユーザーに喜んでもらえるものが前提だ。顧客満足の徹底的な追求こそ、こだわりの強い生産農家と消費者の双方から指示を集める理由といえる。
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