第2回 戦略課題を確実に捉えるマーケティングROI(前編)【連載】「変わる」広告会社(1/2 ページ)

収益を伸ばすために、今やらなければならないマーケティングは何か――。対象事業をマーケティングROI視点で分析し、「マーケティング活動」「顧客行動(顧客構造)」「収益」のメカニズムを可視化することだ。

» 2013年03月01日 08時35分 公開
[櫻木裕之(さくらぎ・ひろゆき),博報堂]

 収益を伸ばすために、今やらなければならないマーケティングは何か――。この問題に対して常に“正解”を出し続けることが経営者やマーケターのミッションであることは言うまでもない。近年、この“正解率”を高めるために「ビッグデータ」を活用したPDCAサイクルマネジメントをマーケティング戦略立案の中心に位置付け、収益性の改善に成功している企業が増えている。そこで今回は拙著「『本当のお客様』の見つけ方〜儲かる顧客構造をつくるマーケティングROI〜(日本経済新聞出版社)」より、「ビッグデータ」から収益性を高める「知恵」を抽出し、確度の高いマーケティング戦略を構築する方法論について紹介する。

「ビッグデータ」から「知恵」を抽出する「マーケティングROI視点の事業分析」

 最初に、「ビッグデータ」から、どのような「知恵」が抽出できるのか。この「知恵」について整理してみよう。

 まず、「知恵」は、収益性を高めるために、今、改善すべき「マーケティング活動」(=「課題」)と「マーケティング活動」の費用対効果を高める施策ノウハウ(=「教訓」)に分解することができる。さらに「課題」は、現状投資されていない収益性の高い「マーケティング活動」(=「機会」)と、現状投資されている収益性の低い「マーケティング活動」(=「無駄」)に分解できる(図1)。

図1 「自社データ」から抽出される「知恵」

 ここで、「ビッグデータ」から「知恵」を抽出するために、最も重要な活動が、「マーケティングROI視点の事業分析」となる。私は、「マーケティングROI視点の事業分析」の考え方は、人間で言うところの「健康診断」と同じであると、至る所で紹介している。

 私たちは普段、健康診断を通じて自分の身体の実態を捉え、その現象面から初めて「異常」や「特徴」について知ることができる。そして「異常」が見つかれば「精密検査」を通じてその原因を特定し、身体の「特徴」を踏まえた最適な「処方箋」を発行する。(実際にはあり得ないことだが)もし、健康診断を受けていないと、「病気」を見逃すなど、後に身体に大きなダメージを与えるリスクを高めることになる。

 事業においても同じことが言える。事業の「収益性(=健康)」を脅かす「課題(=異常)」や「教訓(=特徴)」を捉えずにマーケティングの意思決定をすることは、収益性を低下させるなど、事業に大きなダメージを与えるリスクを高めることになる。このように、意思決定確度を高めるために、「実態を捉え、その現象面から、『収益性(=健康)』を脅かす『課題(=異常)』や『教訓(=特徴)』を捉える」という点において、同じ考え方であるということになる(図2)。

図2 「健康診断」と「マーケティングROI視点の事業分析」
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