マーケターが必ず押さえるべき、「アンケート」「インタビュー」「ソーシャルリスニング」のデメリットを紹介します。
この記事は、『顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング』(大広WEDOテクノロジーチーム著、日本能率協会マネジメントセンター)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
「マーケティングで活用しやすいかたち」で溜めた顧客の声を、実際に分析していきます。
その前に復習として、これまでの「顧客の声の集め方」のメリット、デメリットを整理しておきましょう。すると、AIを使って溜めた顧客の声がいかに分析しやすいかが見えてきます。
これまでの「顧客の声の集め方」には、顧客の側から自社のコールセンターへコンタクトしてくれる場合を除くと、「アンケート」「インタビュー」「ソーシャルリスニング」の3種類がありました。
アンケートとは、例えば調査会社のモニターから1000人程度をリクルートし、「自社の商品を認知している人」「使用経験がある人」「継続している人」といったセグメント分けをして、定量調査を行うというものです。おそらく、すでに活用している企業も多いのではないでしょうか。
メリットとしては、十分なサンプル数を確保でき、納得のいくデータ分析ができる点が挙げられます。また、同じフォーマットで継続的にアンケートを行うことにより、変化を追うことができる点も魅力です。
一方でデメリットもあります。
1つは、「あくまでも調査会社のモニターであり、謝礼を与えて答えてもらっているため、バイアスがかかり得る」点。そしてもう1つは、「あらかじめ用意した選択肢から選んでもらう方式のため、新たな気付きを得ることが難しい」点です。
どちらにしても、回答者の本音を得づらいのがデメリットです。
インタビューとは、例えば「調査会社のモニターから数人をリクルートし、デプスインタビュー(1対1のインタビュー)やグループインタビューを行う」というものです。
アンケートとは違い、被験者の回答に応じて深掘りする質問ができるため、新たな気付きを得やすいのがメリットですが、デメリットもあります。
1つ目は、アンケートと同じくバイアスがかかり得る点、2つ目はサンプル数が少ないため、統計として有効ではない点。3つ目は、被験者の回答を読み取るのにインタビュアーや分析者の力量が必要になる点です。
アンケートとインタビューを比べると、どちらも一長一短であることが分かります。
2010年代以降増えてきているのが「ソーシャルリスニング」です。
ソーシャルリスニングとは、SNSで発信されている内容を分析し、トレンドや評判を追うものです。主に特定の単語についての発話数の変化や、発話された内容を単語の頻出ランキングやワードクラウドなどから観測します。
メリットとしては、アンケートやインタビューとは違い、発信者が自発的に発信した内容であるため、バイアスが少ないことが挙げられます。また、SNSの個人アカウントは膨大にありますから、サンプルも十分な数を得られます。
アンケートとインタビューの良いとこどりのように思えますが、デメリットも存在します。
1つ目のデメリットは「SNSの個人アカウントは匿名のものも多く、誰が発信しているのか、そのプロフィールが分からないことが多いため、深い分析が難しい」点です。
そしてもう1つのデメリットは「特定の単語ベースでの分析に限られるため、深い洞察が難しい」ことです。
以下に挙げるのは、ソーシャルリスニングの一例です。
ワードクラウドを使えば、頻出する単語が大きく見えますし、単語の頻出ランキングを使えば、どの単語が何回発言されているかが分かります。
しかし肝心の「それが何を意味するのか」が分かりづらい。これがソーシャルリスニングの限界です。単語ベースでの分析しかできないため、それをもとに連想ゲームのような分析しかできないのです。
3つの方法のメリット、デメリットを整理して改めて分かるのは「どの方法にも一長一短がある」という事実です。
特に、「量を担保する」ことと「深い洞察を得る」ことはトレードオフの関係にあります。「深い洞察を得る」ためには、情報量のある個人の声が必要である一方、これを大量に集めるのはそもそも難しく、なかなか実現しません。
また、ソーシャルリスニングからは「大量のテキストデータを分析することが、そもそも難しい」ことも分かります。
「顧客の声」を分析するにあたって立ちはだかっていた大きな壁。ChatGPTなどの基礎技術として自然言語のベクトル化が広く活用できるようになり、この壁は打破されました。