マーケ分析「結果論」はもう限界 生成AIこそが「顧客の本音」を引き出せるワケ

本記事では、対話から得た顧客のデータをいかに「マーケティングで活用しやすい」かたちで溜めていくかを解説していきます。

» 2025年05月19日 07時00分 公開
[大広WEDOテクノロジーチーム顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング]

この記事は、『顧客価値を劇的に高める生成AIマーケティング』(大広WEDOテクノロジーチーム著、日本能率協会マネジメントセンター)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 本記事では、対話から得た顧客のデータをいかに「マーケティングで活用しやすい」かたちで溜めていくかを解説していきます。

台帳データの限界

 その前に、顧客のデータをマーケティングに活用する方法について、従来のやり方ではどのようにしているでしょうか?

 すでに顧客データを溜め、分析している企業は多いでしょう。というより、顧客データを溜めたり、分析したりしていない企業のほうが少ないのではないかとも感じます。

 これまでの顧客データは「台帳データ」と呼ばれているようなものでした。ホテルや旅館のフロントに溜まっていく「台帳」です。

 台帳データの分析によって得られたものも多くあります。

 本書では「初めて自社商品を購入してくれた顧客に2回目も買っていただけるかどうかが重要」と伝えています。

 1回買っただけの顧客が2回目も買ってくれるとは限りませんが、2回買った顧客は3回、4回と買ってくれ、長期優良顧客となる可能性が高まる。これはさまざまな企業が台帳データをもとに分析して得た経験則を収束し、「本当にそうなのか」の分析をへたうえで固まっている、マーケティングの鉄則です。

 しかしここが、台帳データの「限界」でもあります。

 2回目も購入してくれた顧客は、3回、4回と買ってくれ、長期優良顧客となる可能性が高まる。これは確かにその通りなのですが、同時に、結果論に過ぎない事実でもあります。

 「それでは、初めて自社商品を購入してくれた顧客に、いかに2回目も買っていただくか」という具体的な施策の話になると、感性をもとに実験するしかありませんでした。

 「Aさんにこんなことを言ったら、2回目も買ってくれたよ。だからこんな営業トークがいいんじゃないかな」と試み、PDCAを回してなんとか経験値を溜めていく。取りこぼしや無駄の多い施策が、現場では実際に数多く行われてきました。

 あるいは、ECサイトで商品を売っている企業の場合は、こうした無駄を避けるためにさまざまなデータを組み合わせて仮説を立てることもあります。

 例えば、Webサイトの閲覧データを活用し、2回目も購入してくれた顧客は、1回だけで離脱してしまった顧客よりも特定のWebページを見ている割合が多いことを発見したとします。そこで、その特定のページに来訪する顧客を増やせば、もっと2回目も購入する顧客が増えるだろうと仮説を立て、バナーをつくるような施策を試してみる、といったことです。

 他にも、商品の購入データを活用し、最初に商品Bもセットで購入した顧客のほうが2回目購入をしている割合が多いことを発見し、セット売りの割引サービスを提案する施策を試してみるなど、さまざまなデータの組み合わせから仮説を立てて施策を試すことは、現在よく行われている方法です。

写真はイメージ、ゲッティイメージズ

 こうした台帳データに加えて、購買データやWebの行動データを組み合わせることで、感性ではなくデータに基づいた仮説から施策を検討し、無駄打ちを避ける方法が現在の顧客分析の主流といえます。

 ただ、「特定のWebページを見た」や「商品Bを買った」いうデータも、ある意味、行動の結果論でしかないといえます。

 なぜこうした行動をとった人が2回目購入につながったのか、という原因については分からず、仮説でしかありません。やはり台帳データでは限界があるようです。

生成AI活用で「原因のデータ」を可視化できる

 AIによるコンタクトセンターができ、顧客と対話を重ねると何が変わるのでしょうか?

 それは、商品の何が気に入ったのか、あるいは気に入らなかったのか、顧客に直接聞けることです。リアルの店員とは異なり、AIだからこそ顧客もずけずけと本音を話してしまう、ということがありました。

 リアルの店員に「もう一度ご購入いただけませんか?」と聞かれた場合、仮に購入する気がなかったとしても、「よいと思うんですが、また今度検討します」などと、ついはぐらかしてしまうことはあるのではないでしょうか?

 これがAIの店員であれば、何の遠慮もなく「いや、値段の割に肌に合わなかったから」と本音で答えてしまうでしょう。

 こうした声は、商品を買う理由、買わない理由という「原因のデータ」といえます。

 これまで分析で使っていた「特定のWebページを見た」「商品Bを買った」という「結果のデータ」とは全く意味が異なることが分かると思います。

 結果のデータから仮説を立てて施策を考えるよりも、原因のデータを活用したほうが施策の精度が高まります。もちろんこれまでの「結果のデータ」も十分に有益です。これに「原因のデータ」を掛け合わせることで、顧客分析のレベルが格段に上がることがお分かりになるかと思います。

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