「再現性がない」と言わせない マーケKPIを徹底的に管理する方法顧客起点でLTVを最大化するトヨクモのマーケティング戦略(2/3 ページ)

» 2025年05月15日 08時00分 公開
[中井康喜トヨクモ]

KPIを絵に描いた餅にしない 実行力を高める組織・連携の仕組み作り

 顧客起点のKPIを設定しても、それを達成するための「実行力」がなければ絵に描いた餅になってしまいます。トヨクモでは、組織体制や部門間の連携プロセスにも「仕組み」を取り入れ、実行力を高めています。

顧客視点を根付かせるチームビルディング

 本連載の第一回『「THE MODEL」から脱却して解約率0.7%を実現する過程で私たちがやったこと』で触れた通り、マーケティング関連業務は、主に「プロモーショングループ」(認知〜PQL獲得)と「Strategic Growthグループ」(PQLナーチャリング〜LTV向上)が担います。

 各グループ内には専門担当(コンテンツ、デジタル、顧客サポートなど)がいますが、重要なのはチーム全体に「顧客視点」を文化として醸成・維持するための具体的な仕組みを意図的に導入している点です。

  • 定例での「顧客の声」共有: サポートへの問合せ、アンケート結果、NPS、ユーザーインタビューでの発言などを定期的に共有
  • ペルソナ/カスタマージャーニーマップの活用: 施策立案時に必ず立ち返り、「顧客にとっての価値」を問う
  • ドッグフーディング(自社サービス利用)の推奨: 顧客目線での体験・理解を深める
  • 成功/失敗事例のオープンな共有:結果だけでなくプロセスや学びを共有し、心理的安全性を確保。Slackなどでの積極的な情報共有も推奨

 これらの活動を通じて、「顧客のために」という意識を日常業務の当たり前にしています。

部門連携を“仕組み”で円滑化する

 PLGの成功には、プロモーション、Strategic Growth、カスタマーサポート、製品開発といった部門間のスムーズな連携が不可欠です。トヨクモでは、この連携を個人の関係性や努力に依存せず、「仕組み」として機能させることに注力しています。

具体的な仕組み

目的別・部門横断の定例会議体

 「PQL→商談化率改善会議」「製品フィードバック会議」など、目的を明確にした会議を設定し、アジェンダ事前共有、ファシリテーション、議事録共有を徹底。

情報共有ルールとツール

 情報共有においては、「ストック型情報/フロー型情報」と「過去/現在/未来の時間軸」の視点が重要です。ストック型(決定事項など)は蓄積と検索性、フロー型(社内メッセージや予定など)は迅速な共有を重視し、それぞれの性質に合うルールとツールを選びます(私たちは、kintone、Slack、トヨクモ スケジューラーなどを活用しています)。このような情報の特性と時間軸を考慮したルールとツール活用が、効果的な情報共有と組織の情報活用能力向上につながります。

情報の分類と活用するツールの例

 さらに、これらの仕組みを円滑に機能させるためには、以下の「共通認識・文化」の醸成が鍵となります。

  • 共通言語、共通目標:「顧客起点」「LTV」などの定義をそろえ、部門を超えた共通目標(OKRなど)を設定
  • 相互理解と尊重の文化:各部門のミッションや業務内容への理解を深め、リスペクトし合う文化を育む。これは一朝一夕にはできませんが、意識的なコミュニケーション(部署紹介LT会の実施など)を通じて醸成
  • 役割と責任範囲の明確化:RACIなどを参考に、連携プロセスにおける各部門・担当者の役割と責任範囲を明確にする

 重要なのは、属人的な関係性に頼らずとも、必要な情報連携や意思決定がスムーズに進む「連携体制」を構築することです。

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