購入完了、会員登録、資料請求、アプリダウンロードなど、ビジネスモデルやWebサイトの目的によってCV(コンバージョン)は変わります。当然、それを最適化するためのCRO(コンバージョン率最適化)で目指す方向や方法も変わります。
前回はWebサイト改善におけるゴール(KGI)と戦略(KPI)の決め方についてお伝えしました(関連記事:「Webサイト改善のゴール(KGI)と戦略(KPI)の決め方」)。
連載第3回の今回は、CRO(コンバージョン率最適化)です。CVR(コンバージョン率)を改善していくためのプロセスと各プロセスにおけるポイントを解説していきます。
購入完了、会員登録、資料請求、アプリダウンロードなど、ビジネスモデルやWebサイトの目的によってCV(コンバージョン)は変わります。それに応じてCROで目指す方向や方法も変わります。
例えば、ECサイトでカートから購入完了までの進捗が悪いのであれば、その間のフォームを改善する必要があるかもしれませんし、多くのユーザーが特定の箇所で離脱しているのであれば、離脱を防ぐような情報をWeb接客ツールで案内する必要があるかもしれません。LP(ランディングページ)に検索広告から流入させてもキービジュアルですぐに離脱されているようであれば、A/Bテストでキービジュアルを検証する必要があるかもしれません。
このように、課題や対象によってCROを実行する方法も変わります。
CROを確実に進めていくためのプロセスを紹介します。
まずは、CV経路上のデータを正確に取れる状態にすることが大切です。手始めに、CVまでに利用者が通る導線(初回接点から売り上げにつながる箇所まで)を図示することをお勧めします。必要であればカスタマージャーニーマップなどを作成しても良いでしょう。
その上で、計測に必要なデータをどのツールで取得するかを明確にし、計測できているかを確認しましょう。Web解析ツールで正しくCVの設定ができていなかったり、ドメインを跨ぐのにクロスドメインが未設定だったり、顧客データベースや外部データベースとの連携が崩れたりしていませんか。
CRO施策が実行される前に、少なくとも今回のCROに必要なデータが正しく取れているかをあらためて確認し、正しい分析や評価ができる環境を目指しましょう。
整えたデータ環境を使って、Webサイトにどのような課題があるのか分析していきます。
Webサイトのボトルネックを見つけるために有効な手法の一つが「ファネル分析」です。ファネル分析は、ユーザーがWebサイトに訪問してからCVまでの過程のどこで離脱が発生しているのかを可視化する手法です。離脱率の高いページから改善することで、早く大きな成果を期待できます。
ボトルネックとなっている高離脱率のページを特定したら、次にページ内の詳細な分析を行います。
ページ内の分析は、Web解析ツールの設定で必要なデータを確認できるようにもできますが、設定にはある程度の知見が必要となります。設定を難しく感じる場合は、ヒートマップツールやコンテンツ分析ツ−ルを使ってユーザーの行動を分析するのも良いでしょう。
ページ内を分析する際のポイントは、差分を見つけることです。CVしているユーザーと、CVしていないユーザーとの行動の違いや、CVに貢献しているコンテンツとそうでないコンテンツの違いを見ることで、改善すべき箇所が特定しやすくなります。
改善箇所を決めたら、改善施策を考えます。この際、期待される成果だけで決めるのではなく、施策を実行するまでの難易度も考慮しなければなりません。
例えば、A/BテストツールやWeb接客ツールの設定が既存のシステムに影響してしまうような場合や、Webサイトの仕様上そもそもやりたい施策が設定できない場合もあるでしょう。また、対象のページが自分の担当領域外であれば、他部門の協力を得るのに時間がかかる場合もあります。施策の決定前には技術面や組織面での難易度も調査しておきましょう。
「改善で期待できる成果」と「施策実行の難易度」、この2つのバランスを取りながら最適な施策を柔軟に決定します。
それと併せて、改善施策によって何が変化してCVに寄与するのかも考えます。これがCV以外で施策を評価するための中間指標になります。
ページの遷移率を上げるためにボタンの配置を変えたのであれば、該当のボタンのクリック率も見る必要があるでしょうし、ページの読了率を伸ばして下部を見せることでCVにつながると考えたのであれば、ページスクロール率が中間指標となるでしょう。
確認すべき中間指標は施策の内容によって変わります。あらかじめメンバー内で定義し、必要に応じて追加の設定や他ツールを用いた計測もできるようにしておきましょう。そして、施策を評価するためにも、必ず直近の数値を確認しておきましょう。
施策実行から、外部の会社にアウトソースすることがよくあります。設定や実行の当事者が自分達以外に変わるため、意思疎通にズレが生じ、本来やろうとしていたことが少しずつ変わってしまうケースも多くあります。
アウトソース先が元々の意図を正しく理解し、それに基づいて進められるように情報を共有し、正しく進んでいるかをチェックできる体制を作り、任せきりにならずに自分達もしっかりと進捗を追うように心掛けてください。
自社で実行する場合もチーム内でズレが出ないよう、結果を確認するだけではなく、しっかり進捗を管理して実行しましょう。
Webサイトのトラフィックが多岐にわたり変動しやすい場合やCV経路が複数ある場合は、CVRの変化が分かりにくく成果が見えにくいことがあります。また、実行した施策に触れた人が少なくてCVRに大きな差が出ないケースもあれば、1件のCVでCVRが大きく変わってしまうケースもあります。
CVRの変化を確認することは重要ですが、施策決定時に設定した中間指標の結果もチェックするようにしましょう。
中間指標の結果も良好でCVRも上がっているのであれば、まさに仮説通りの結果となるため本番環境に実装し(A/Bテストを行った場合)、他にも適用可能な箇所があれば実装します。
結果が良くなかった場合は、施策の敗因を特定します。CVRが上がらなかっただけではなく、中間指標の結果が仮説通りではない場合も出てきますので、中間指標も検証し、勝因と敗因を分析できる体制を整えておきましょう。
分析をする際には、セグメントを活用することをお勧めします。全体で見ると成果がなかった場合でも、特定の流入元やランディングページ、デバイスカテゴリなどによって結果が変わる場合があります。検証に足り得るデータ量があれば、内訳を見ることで違う課題や次に生かせるポイントが見つかるかもしれません。
CROは結果ばかりに目がいきがちですが、その結果を正しく扱うためには、事前の環境整備や実行までのプロセスもとても大切です。第4回となる次回は、具体例を用いながらCROの施策について解説します。
小川卓
おがわ・たく UNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)。Webアナリストとしてマイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。
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