連載第2回目となる今回は、Webサイト改善のためのゴール(KGI)と戦略(KPI)の設定方法についてお伝えしていきます。
皆さんは「良いWebサイトを作る」ためには、何が必要だと思いますか。
登山に例えてみましょう。登山をするときに最初に決めるのは「いつ」「どの山を登るのか」ではないでしょうか。
Webサイト改善も考え方は同じです。何を「良い」とするのか、何を改善するのか、どの指標をいつまでにどれくらい伸ばすのかといったゴールを定めることが重要です。
WebサイトのゴールとなるKGI設定に必要な要素は「期間」「指標」「値」の3つです。
ゴールが決まっていないと、何を改善すべきかが定まらず、最適な施策選びや正しい評価を行えなくなります。ゴールを決めること(あるいは決めてもらうこと)がWebサイト改善の第一歩です。
上記を踏まえて、KGI設定の良い例と悪い例を見てみましょう。
先述の通り、3つの要素がしっかり盛り込まれているか、そしてビジネスにつながるようなKGIになっているかをチェックしましょう。
Webサイトのゴールが決まったら、どのように達成するかという「戦略」を考えます。私が戦略=KPIだとお伝えしているのは、KPIが数値だけではなく全体の方針も指すからです。
KPIを決める方法は多種多様です。ここでは「分解法」による決め方を紹介します。分解法とは名前の通り、ゴールをいくつかの要素に分解してKPIを決めていく方法です。
例えば、オンラインで商品を販売しているサイトであれば以下のような方程式が成り立ちます。
これが、オンラインのお問い合わせから商談を通じて成約につながるサイトの場合は、次のように考えられます。
では、このような「訪問数」「購入率」「問い合わせ率」だけがKPIなのかというと、そうではありません。大きな要素だけをKPIにすると、実行できる施策の幅が広過ぎるという課題が出てきます。
そのため、訪問数を増やすためにはどういった集客手法が考えられるのか、問い合わせ率を上げるにはサイト内のどの部分を改善できるのかといった各要素をさらに分解した施策の洗い出しが必要となります。
上記が施策を洗い出してみた例です。こうすることで、いろいろな方法で各要素を改善できることが分かるようになります。
ここから、どの施策を重要視するかを決めていきます。全ての施策を実行できるのであれば、全てを改善してもいいでしょう。しかし、実際はリソースや予算の観点から優先順位を決める必要があるケースがほとんどです。
簡単に言うと「実行可能性が高い施策を選ぶ」ということです。
この「実行可能性」には、2つの要素があります。一つは「施策が思いつく」、もう一つは「実行できる見込みがある」です。
改善したい箇所があっても、アイデアが浮かばなければ何も始まりませんし、どれだけ素晴らしいアイデアがあっても、実行できなければ意味がありません。つまり、戦略(KPI)を設定するには、その実行に向けた戦術(施策)も合わせて考えることが重要なのです。
KPIを設定した後に、あらためて具体的な施策を考え始めてしまうと、最初の数カ月間は何も進まないというケースがよくあります。KPIを決める際には、実行準備が整ったらすぐに動き出せる体制にしておきます。
私が以前在籍していた会社では、KPIの候補を施策実行の大体3カ月前には絞り込み、その後は残りの期間で必要な人員や予算の調整を行っていました。
優先順位をきちんとつけることで、スケジュール調整や予算確保、関係者への説明がスムーズになり、何をすべきかが明確になるので、実行可能性が高まり、成功の確率もぐんと上がります。
KPIの例を聞かれることがよくあります。同じ業種でも、Webサイトの状況や、実行可能な施策によって、KPIとするべきものは変わります。さらに、内部や外部の環境によってKPIは定期的に見直され変わっていくものです。
ここでは、一般的なKPIの設定例を紹介します。ただし、書いてあるものをそのまま利用すればいいというわけではなく、あくまでも参考にした上で、自社サイトの状況に合ったKPIを設定するようにしましょう。
Webサイト改善のゴール(KGI)と戦略(KPI)をしっかりと決めることで、その後の施策の実行や評価が格段に楽になります。
KPI設定ができていない方は、ぜひチャレンジしてください。取り組むべきことが明確になることで、きっと皆さんの業務がより評価されるようになるでしょう。
また、すでにKPI設定ができている方は、KPIを高めるためのアクションを行いながら、KPIが増加しているか日々追っていきましょう。KPIは設定後に変更しても、問題ありません。外部(同業他社の動向)や内部環境(体制の変更、施策をやり切った)などの事情により、変わることもあります。ぜひ定期的に見直しを行ってください。
連載第3回目となる次回は、Webサイト改善の一つである、CRO(コンバージョン率最適化)について解説します。
近年ビッグデータの活用が進む中で、WebマーケティングやUX改善においては、膨大なデータを分析して個々の顧客に最適な施策を実行することが求められています。CDP(顧客データプラットフォーム)やWebサイト分析ツールも多くの企業で取り入れられるようになってきました。
そこで重要となるのがWebマーケティングにおけるPDCAサイクルの回し方やKPIの設定の仕方、CROの手法、GA4でのデータ収集・分析について正しい知識を持つことです。
この連載では、Web分析のプロフェッショナルである小川卓氏が、Webサイト改善のための分析やその手法について、上流から下流まで、さまざまな視点から全12回にわたり解説します。
小川卓
おがわ・たく UNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)。Webアナリストとしてマイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。
UNCOVER TRUTHは、データ活用基盤であるCDP「Eark」の提供や、それらCDPの構築と活用を支援するコンサルティングサービスと、コンテンツデータによるユーザー体験分析ツールの「Content Analytics」を提供しております。各ソリューションを通じて、企業が保有する1stPartyDataの分析や活用を促進しています。
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