三井住友カード×LINEヤフー×Hakuhodo DY ONEが語る「広告不正」「MFA」の深刻問題広告主、メディア、代理店が議論

メディア品質にまつわるさまざまな課題に、デジタル広告業界はどう取り組んでいるのか。広告主、メディア、広告代理店がそれぞれの立場で語った。

» 2024年09月27日 18時00分 公開
[下玉利尚明ITmedia マーケティング]

 AIの急速な普及とそれに伴うMFAサイトの急増、ブランド安全性/適合性やシグナルロスを背景とした新たな指標の重要性など、デジタル広告業界にはさまざまな課題が山積している。広告主、メディア、広告代理店はそれぞれ、この課題にどう取り組むのか。 DoubleVerify Japanが2024年6月27日に開催した「2024年版グローバルインサイト:Japanウェビナー」で三井住友カード マーケティングユニット(東京)の中村啓夢氏、LINEヤフー トラスト&セーフティ本部 本部長の一条裕仁氏、Hakuhodo DY ONE プラットフォームソリューション局 ソリューション推進部 部長の秋吉哲也氏が語り合った。モデレーターはDoubleVerify Japan ビジネス開発部長の八木拓也氏が務めた。

不適切な掲出、botによるクリック……広告費のムダをなくすには?

 最初のテーマはメディア品質向上への取り組みだ。三井住友カードはDoubleVerifyの計測ツールを導入し、自社の広告配信面の品質を日々確認している。KPIの中でも特に重要視するのが「ブランドセーフティー(安全性)」や「ブランドスータビリティー(適合性)」だ。中村氏は「キャッシュレス業界をけん引していく立場としてブランドのイメージを毀損しないのはもちろん、広告効果を最大化するというところに重きを置いています」と語った。

 三井住友カードの広告運用を委託されているのがHakuhodo DY ONEだ。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)とアイレップが統合して2024年4月1日に新会社として生まれ変わった同社は、デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が定める認証基準に基づき「ブランドセーフティー」「無効トラフィック対策」の2分野で認証を取得した。広告品質課題に対する社内組織も設立し、広告の運用環境を安全に保つために、外部検証やポリシーの順守、DSP事業者との連携も強化している。秋吉氏は「広告の品質向上に責任を持つことで、クライアント企業や社会の信頼にしっかり応えていくための適切な措置を遂行しています」と話す。

 LINEヤフーはメディアあるいはプラットフォーマーの立場として、広告主やユーザーに対してより大きな責任を持つ。一条氏は「広告が不適切なページに表示されないようにすること、botのようなもの広告効果を生まないトラフィックに対しては広告を表示させない、無効なクリックに対しては課金させないように、24時間365日、ブランドセーフティーおよびアドフラウド対策のための監視と対策に努めています」と述べた。

増殖するMFAサイトにどう対処すればいいのか

 広告業界に関わる3社はそれぞれの立場で努力している。それでもなお、メディアを汚し、広告費をかすめ取ろうとする者の手口は常にアップデートされるため、手を休めることができない状況が続く。

 2024年は世界中で大きな選挙を控えており、それに伴うフェイクニュースや物議を醸すコンテンツの増殖が懸念される。広告主としては、ネガティブな感情を呼び起こすコンテンツに自社の広告が併載されていることは看過できない。中村氏は「誰もが自由に情報を発信できるソーシャルプラットフォームには特に注意が必要」と考え、Double Verifyの計測ツールを使って広告掲載にふさわしくないジャンルの記事を除外し、クリーンな面への掲載を確保するようにしている。

 とはいえ、やみくもに除外リストの範囲を拡大し過ぎてしまうと、パフォーマンスとのトレードオフに陥るケースもある。安全性の確保は大前提として、適合性の観点からは、「広告主の業種特性やキャンペーンの目的なども踏まえて除外リストをカスタマイズする必要がある。また、予約型広告の買い付けやPMP(プライベートマーケットプレイス)の活用なども対策になる」と秋吉氏は語った。

 新たな課題として注目されているMFAサイト(広告掲載だけを目的に生成された低品質サイト)について、中村氏は「一画面に広告占有率が高いサイトはユーザー体験の面からも好ましくないと考えている」と指摘した。

 三井住友カードは新デザイン「オーロラ」においてリサイクル素材であるPET-Gを使用するなど、脱炭素に積極的だ。二酸化炭素排出量の多いMFAサイト(関連記事:「MFA」大増殖を後押しする生成AIの台頭 デジタルメディアに明日はあるか?」)を排除することは、会社としての方向性にも一致する。中村氏は「二酸化炭素排出量を意識した取り組みは結果的に広告運用の効率化につながるので、積極的に取り組んでいきたい」と付け加えた。

 秋吉氏はMFAに関して広告主からの問い合わせが増えていることを明かし、「入札戦略の機械学習や効果計測に及ぼす悪影響が懸念される。DoubleVerifyのツールを活用してMFAサイトへの配信をブロックすることが有用な打ち手」と強調した。

 一条氏も広告ネットワークも運営する立場でMFAサイトが広告主のブランドセーフティーに悪影響を与えることを認識しており、「Webサイトの事前審査と常時監視を強化している」と述べた。

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