Cookie廃止で広告主とデータプロバイダ、媒体社にこれから起きることとその対策ポストCookie総まとめ

連載の最後に、サードパーティーCookie廃止が広告主と媒体社それぞれに与える影響と今後の対策についてまとめる。

» 2024年04月17日 11時00分 公開
[中野伸飛マイクロアド]

 これまで計4回にわたってポストCookie時代に向けた代替ソリューションについて、当社マイクロアドにおける配信事例を交えた解説を行ってきた。連載の最後となる本記事においては、マーケットの各プレイヤーへの影響や対策の状況について触れていきたい。

サプライサイド(媒体社)の課題

 まず媒体社においては、さらなる広告配信単価の下落が予想される。

 2017年前後にAppleが「Safari」にITP(Intelligent Tracking Prevention:サイトトラッキング防止機能)を搭載したことに始まり、その後のコロナ禍の影響もあって、媒体社の広告配信単価は一般的に下がり続けている。2024年後半にGoogleが「Chrome」でサードパーティーCookieの廃止を本格化するタイミングから、この傾向にはさらに拍車がかかるだろう。

 以下のグラフはマイクロアドが独自に調査した、ChromeにおけるCookieなし/ありの単価比較だ。実にスマートフォンで75%程度、PCで50%の広告配信単価および売り上げの下落が想定される。

ChromeにおけるCookieなし/ありの単価比較(数字はマイクロアド調べ、以下同)

 媒体社のポストCookie対策の一つとして考えられるのが、この連載の第2「共通IDソリューションが導くポストCookie時代のマーケティング戦略」で紹介した「確定IDソリューション」だ。しかし、これは媒体社がアクティブな会員ユーザーを有することが前提となっているため、媒体社のビジネスによっては対応自体が難しい場合もある。

 推定IDソリューションやコンテクスチュアルターゲティングにおいては、DSP各社などのプラットフォーマーが独自に開発、対応することでソリューションが流通しているということもあり、どうしても自発的な対応が難しく、有効性のあるソリューションになり切れていない感がある。

 そのような状況下でも各媒体社が対応を進めているという話をよく聞くのが、Googleが2022年10月に提供を開始したPAIR(Publisher Advertiser Identity Reconciliation)だ。媒体社はGoogleのプラットフォームを主軸に置き、アドサーバもGoogleの「Googleアドマネージャー」や「Admob」を活用していることが多い(特に日本ではその傾向が顕著だ)。そうした前提を踏まえ、Googleは媒体社向けに、自社のマーケティングプラットフォーム(DSPの「DV360」など)で有効なファーストパーティーデータの識別子としてPAIR(外部リンク/英語)を用意したのだ。

 しかし、Google以外のDSPではPAIRは使えない。そこでGoogleは「セキュア シグナル」により、外部のDSPバイヤーにIDソリューションのIDを共有するための仕様を提供している。この設定を行うことで、確定/推定問わず主要IDソリューションの広告リクエストを各社に送ることが可能となる。

 現状では残念ながらまだ共通IDが含まれる広告リクエストは、マイクロアドが受けている広告リクエストにおける25%程度にとどまっている。上述したセキュア シグナルの設定を見直すことや、広告枠のリッチフォーマット化をすることで単価を上げるなど、ポストCookie対応に対してマーケット感覚と知見のある取引先と是非対応を進めてほしい。

デマンドサイド(広告主)の課題

 広告主や広告代理店においては、2023年まではポストCookie対策は情報収集にとどまっているケースが多かった印象だが、2024年の年明けくらいから具体的な対策を実施している企業が増加している感覚がある。

 特に注目されているのが、ファーストパーティーデータの活用だ。デジタル広告を出稿する企業は消費者に「購買する」「利用する」というアクションを求めることが多いため、既に会員のIDや情報をファーストパーティーデータとして保有していることが比較的多い。これをマーケティングにも活用するに当たっては会員に明確な同意取得を行うことなどがハードルとして上げられるが、最近は比較的多くのサービスで利用規約の改訂や同意取得が進んできている印象がある。

 実際、ウォールドガーデンと呼ばれるGAFAMなどの広告媒体への出稿する際にはハッシュ化したメールアドレスなどを使った広告配信が常態的に行われている。最近では大手広告代理店やCDP(顧客データプラットフォーム)ベンダーなどがデータクリーンルームのサービスを提供し始めていることもあって、ファーストパーティーデータの有用性はさらに上がっており、活用シーンも増加傾向である。

 会員を保有していない広告主に対してマーケティングのためにデータを販売しているデータプロバイダも存在する。当社のデータプラットフォーム「UNIVERSE」はデータプロバイダの企業との積極的な提携を行った上で、各プロバイダが保有するデータを使ったデジタルマーケティングソリューションを提供しているが、データプロバイダはポストCookie時代に向けたプライバシーポリシーの整備や同意取得が先に進んでいる印象がある。

 データプロバイダを利用することで、例えば自社で会員および会員情報などのファーストパーティーデータを保有していなくても、ターゲットとしたい消費者のセグメントに対して広告を配信することが可能となる。すなわち、ポストCookie時代においても理想のターゲットにリーチすることが可能になるのだ。

 広告主およびデータプロバイダのポストCookie対応が進み始めていることもあり、マイクロアドでは確定IDソリューションを活用したキャンペーンが、ファーストパーティーデータを保有しない広告主においても年末年始から急増し始めており、既に数百件のアカウントでの配信が実現できている。

確定IDソリューションを活用したキャンペーン数の推移

Cookieレスでもマーケティングは終わらない

 Cookieの利用が著しく規制されていくことによって、これまで提供されてきたマーケティング手法は形を変えることが余儀なくされる。

 しかし、デジタルマーケティングの基盤がポストCookieにより刷新されることで、これまで配慮ができていなかった消費者のプライバシー保護を配慮したエコシステムに生まれ変わっていく。

 「Cookieの死」は決してマーケティングの終焉を意味するものではない。むしろ、本質的で継続的なマーケティングへの入口となるべきであり、それこそ業界全体で成し遂げなければならないテーマなのだ。

寄稿者紹介

中野伸飛

なかの・のぶたか マイクロアド 執行役員。2011年にマイクロアド新卒入社。媒体社の広告収益化プラットフォーム「MicroAd COMPASS」を扱う営業部門に所属後、2017年にプロダクト開発部門へ異動。データプラットフォーム「UNIVERSE」の立ち上げや、Post Cookie時代に向けたソリューション開発の企画やアライアンスを担当。現在もプロダクト企画、及び媒体社向け営業部門等を管掌。

 マイクロアドは、ビッグデータを基盤としたデータプラットフォーム「UNIVERSE」を軸に、広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」と、媒体社の広告収益化プラットフォーム「MicroAd COMPASS」を展開している。ポストCookie時代へ向けた対応として、Cookieを代替する各種ソリューションを自社のプラットフォームへ順次導入している。

詳細はこちらマイクロアド Post Cookieソリューション情報サイト


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