共通IDソリューションが導くポストCookie時代のマーケティング戦略ポストCookie総まとめ

Google ChromeのサードパーティーCookie廃止が目前に迫り、広告業界は大きな変革期を迎えている。従来のユーザー追跡方法が制限される中、新たな顧客体験とマーケティング戦略を実現するために注目を集める技術が「共通IDソリューション」である。

» 2024年04月03日 11時00分 公開
[松本宗明マイクロアド]

 共通IDソリューションとは、異なるサイトやサービス間で共通のIDを生成・共有することで、ユーザーの行動をより詳細に理解し、個々に合わせた広告配信やサービス提供を可能にする技術である。これは、プライバシー保護とデジタルマーケティングにおける利便性の両立を目指す、ポストCookie時代における重要なソリューションとなる。今回はその特徴や活用事例について、当社マイクロアドが携わった事例を交えながら解説する。

2種類の共通ID

 共通IDは、大きく2種類に分類される。

1. 確定ID

 確定IDとは、ユーザーの同意を得たメールアドレスなどの確定情報から生成されるIDだ。確定情報をハッシュ化するだけでなく、実際にIDを広告事業者に流通させる際には、多重に匿名化の処理が加えられる。また、最終的には事業者ごとに固有のIDが付与されるため、万が一IDが流出した際にもユーザーの個人情報が特定される恐れがない仕組みとなっている。

 利便性の観点においては、従来のCookieと比較しても高い精度でユーザーを識別できる点が特徴であり、より精緻なマーケティング活動を実現できる。例えば、Cookieでは実現が難しかったクロスデバイスのターゲティングや効果計測も実現可能である。

 一方で、ユーザーから広告事業者へ情報提供を行う旨の同意を取得する必要があるため、IDの生成ボリュームについては課題となる。

2. 推定ID

 推定IDとは、IPアドレスやブラウザ情報、Webサイトのアクセス情報など、統計的な情報を基に生成されるIDだ。あくまで推定技術を基にユーザーを判定するため、明示的なユーザーの同意を必要とせず、オプトアウトも可能とすることでプライバシーを保護している。

 また、大規模にIDを生成することが可能な点が特徴で、ポストCookie環境においてもリーチ規模を十分に確保したいマーケターから期待が寄せられている。

 一方で、確定IDと比べてIDの判定精度が劣る点はデメリットであり、正しく自社のターゲットへアプローチできているかは検証しながら活用する必要がある。

確定IDと推定IDの違い

他ソリューションと比較した活用メリット

 共通IDソリューションには、以下の2つの主要なメリットがある。

1. 人ベースのマーケティング活動の継続

 従来のサードパーティーCookieと同様に、消費者一人一人を捉えたマーケティング活動を継続できる点が共通IDソリューションの大きな特徴である。

 Googleの「プライバシーサンドボックス」をはじめとしたその他の代替ソリューションが群単位、配信面単位でのアプローチにとどまるのに対し、共通IDソリューションは人単位でのアプローチを実現する。

 具体的には、これまでCookieが果たしてきた主な役割であるターゲティングや効果計測、それらを基にした分析での利活用が可能となる。ユーザーのデモグラフィック属性や興味関心、購買行動などをより正確に捕捉し、ターゲティング広告をはじめとするさまざまなマーケティング活動を継続できる点が、大きな活用メリットとなる。

2.safariブラウザ利用者へのリーチ

 共通IDソリューション導入における、最も分かりやすくシンプルなメリットは、Appleのブラウザである「Safari」利用者へのリーチが可能になる点だ。Webトラフィックに関する統計データを提供しているStatCounter(外部リンク/英語)によると、日本のモバイルデバイスにおけるブラウザ利用シェアは、Safariが61.6%、Chromeが32.7%という結果になっている。

2023年の日本のモバイルデバイスにおけるブラウザ利用シェア(Statcounter GlobalStatsのデータを基に筆者作成)

 日本ではiPhoneの利用率が高く、とりわけ若年層ほどその傾向が強い。例えば若年層向けのコスメ商材や新卒採用におけるブランディング訴求などにおいては、iPhone利用者へのリーチは無視できないため、対策は必須だ。

 ポストCookieにおける代替策の代表例といえばプライバシーサンドボックスが挙げられるが、同技術は基本的にはChromeにおけるソリューションとなるため、iPhone利用者へのリーチ手段として共通IDソリューションを導入することは、マーケターにとっては必須の選択肢と言えるだろう。

 では、実際に共通IDソリューションがどう活用されているのか。まず1点目に、サプリメント商材を提供するA社におけるリーチ拡大事例を紹介する。A社は従来リターゲティングやサイト来訪者の拡張配信を行っていたが、対象が広がりきらず施策が行き詰まっていたことから、iOSでもリーチ可能な共通IDによるターゲティングを実施した。結果、Android比較でCPMは約半減、Impressionは5.73倍に拡大した。

サプリメント商材におけるリーチ拡大事例(提供:マイクロアド)

 2点目に、ダイレクトマーケティングにおける活用事例も紹介したい。スポーツくじを提供するB社は購入促進訴求のため、これまでリターゲティングで複数媒体を運用していたが、媒体間でのターゲットの重複を避けられず、パフォーマンスの悪化が課題となっていた。そこで共通IDの導入を試みたところ、iOSにおけるCPAはAndroid比較で約33ポイント改善。各媒体でアプローチできていなかったiOS利用ユーザーからコンバージョンを獲得し、全体の売り上げ増加に寄与した。

スポーツくじにおけるダイレクトマーケティング事例(提供:マイクロアド)

今後の展望

 このように、共通IDソリューションには大きな可能性が秘められている。これまでのデジタルマーケティング技術はCookieと共に発展し、高度化してきた。この先のポストCookie時代においては、今まで以上に高い精度のマーケティング活動、顧客体験の向上が期待される。一方でプライバシー保護についても、より一層の強化が求められている。業界関係者はまさに二律背反するテーマに、同時に向き合う必要がある。その壁を乗り越える一つの解が共通IDソリューションとなるよう、当社も市場の発展により一層尽力していく所存である。

 次回はGoogleが提供するポストCookie対応策の代表例であるプライバシーサンドボックスについて解説する。

寄稿者紹介

松本宗明

まつもと・むねあき マイクロアド プロダクト戦略部 シニアマネージャー。2016年にマイクロアド入社。中小代理店向けの営業活動に従事した後、事業開発部門へ異動。複数プロジェクトのPMを経験後、「UNIVERSE」のポストCookie対応・事業推進を担う。

 マイクロアドは、ビッグデータを基盤としたデータプラットフォーム「UNIVERSE」を軸に、広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」と、媒体社の広告収益化プラットフォーム「MicroAd COMPASS」を展開している。ポストCookie時代へ向けた対応として、Cookieを代替する各種ソリューションを自社のプラットフォームへ順次導入している。

詳細はこちらマイクロアド Post Cookieソリューション情報サイト


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