大手コスメブランドのEstee Lauder Companiesはブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングのより良いバランスを模索し、成功を収めている。同社のアプローチの鍵となるのがMMM(マーケティングミックスモデリング)だ。
Estee Lauder Companies(以下、Estee Lauder)は、自社のマーケティングの影響をより深く理解するために、MMM(マーケティングミックスモデリング)に注目した。MMMは異なるマーケティング要素(製品価格、広告費、販促活動、流通チャンネルなど)が売り上げにどう影響するかを評価し、各要素の組み合わせによる最も効果的なマーケティング戦略を特定する統計分析の手法であり、数十年前から存在する。広告主がAppleのプライバシーポリシー変更やGoogleのサードパーティーCookie廃止によるシグナルロスの問題に対処する中でMMMがにわかに脚光を浴びている。
※本稿は「エスティ ローダーのマーケティングコストの9割は『デジタル』 クリエイターとの賢い付き合い方とは?」の続きです。
Estee Lauderシニアバイスプレジデントのダグ・ジェンセン氏は「どのようなユーザーレベルの測定アプローチも非常に手間がかかり、さまざまなプラットフォームにわたる消費者を監視することはできない。MMMは統計モデルを用いて集約されたデータを使用する」と説明する。ジェンセンは統計学の教育を受けている。
Estee LauderのMMMエコシステムは、メディアやCRMからプロモーションやビューティーアドバイザーに至るまで、さまざまなマーケティングの要素を、特定のKPI(重要業績評価指標)に基づいたモデルで分析している。例えば、マーケターはファネルの上部でブランドの好感度を測定するKPIとしてGoogle検索のクエリボリュームを使用したり、ファネルの中間でブランドサイトトラフィックに焦点を当てて検討度を測定したりしている。
Estee Lauderのモデルでは、ファネルの各部分の影響を見るだけでなく、各モデルが相互にコミュニケーションしているため、マーケターはファネルを通じて各戦術の連鎖効果を見ることができる。
「この入れ子になったエコシステムが当社に変革をもたらした」とジェンセン氏は言う。
この方法論によって同社のマーケターは、異なる優先順位で予算をシミュレートすることができ、マーケティング予算を投入したいファネルの場所を柔軟に変更することができる。そして、その能力は会社全体の年間予算プロセス全体を通してスケールされ、最高の投資収益率を得るためにどの戦術を優先させるべきかについて、マーケターに分かりやすい指針を与える。
ジェンセン氏は、eTailの会場にいた小売業者やマーケターに対して、代理店と協力してMMMを作成し、この手法が再び普及するよう支援することを提案した。Estee Lauderでは、ジェンセン氏率いるチームのアプローチは経営幹部の支持を得ており、その結果は同氏のチームの予算制約を超えてモデルを拡大するのに貢献している。
「今やろうとしているのは、(MMMを)私の予算から全てのブランドの予算に移し、それによって規模を拡大することだ。現状のパワーを見れば、どのブランドもこの取り組みにに参加したいと考えるだろう」(ジェンセン氏)
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