連載
» 2023年11月25日 09時00分 公開

イーロン・マスク氏の野望はいつ破綻する?――2024年のSNS大予測(X編)Social Media Today

スーパーアプリの構想を掲げるマスク氏が改革の大ナタを振るう度、Xユーザーや広告主は心をざわつかせている。Xはこの調子でやっていけるのだろうか。

[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 イーロン・マスク氏のXに関する壮大な計画がどこに向かおうとしているのかは理解できる。そして、より多くの時間とリソースさえあれば、うまくいく可能性があるとも思う。しかし、私にはXが時間とリソースのどちらも手に入れることができるように思えない。つまり、マスク氏の「全部乗せアプリ」というビジョンを効果的に実行するには、Xの動きはあまりにも速過ぎるし、多くのことに手を出し過ぎているということだ。

イーロン・マスク氏の計画は現時点でどの程度実現している?

 代表的な例がサブスクリプションだ。これは理論上はbotに対策に役立つし、同時にXの収益を増加させる可能性もある。

 しかし、Xはあまりにも急ぎ過ぎている。人々にお金を払ってもらいたいのであれば、お金を払うだけの何かを与える必要がある。少額課金であればサインアップは増やせるだろうが、ほとんどの人々は今のところ、従来無料でアクセスできていたアプリにお金を支払う理由があるとは考えていない。

 これが機能するためにはXが不可欠なサービスである必要があるが、2億5300万人のユーザーの大多数にとって、今のXはそれほどのものではない。特に、他にさまざまな競合サービスが存在し、それらが無料で提供されている中では。

 最終的には全てのソーシャルアプリがアクセスに課金する必要があり、Xはその先を行っているにすぎないというのがマスク氏の見解だ。しかし、これまでのところ、その路線で有料化し、ある程度の成功を収めているソーシャルアプリはSnapchat+だけだ。それはSnapchat+が主に裕福なユーザーの間で、彼らが実際に欲しがるさまざまなアドオンを提供しているからにほかならない。

 Xのユーザーは先進市場と発展途上市場の両方であらゆる階層にわたるが、ほとんどの人はお金を払おうとはしていない。そして、Xがユーザーに価格以上の価値を提供することに再度重点を置いてサブスクリプションを推進しない限り、少なくとも短期的な見通しとしては、うまくいきそうにない。

 繰り返しになるが、もっと多くの開発時間をかけ、もっと多くのユーザーの要望に沿ったサービスを提供すれば、これは実現可能な道となるかもしれない。しかし、現状では、Xは失われた広告収入を補うために必死だ。サブスクリプションの推進はいずれ行き詰まるだろう。

 Xはサブスクリプションをゴリ押しし続けるだろうが、2024年半ばのどこかの段階でサブスクリプションへの集中を見直すことになると私は予想している。

「全部乗せアプリ」への道のりは長い

 マスク氏の「全部乗せアプリ」ビジョン構想の核心は、アプリ内決済を中心に展開され、より多くの形態のショッピング、バンキング、資金移動などを全て低コストで可能にすることだ。

 繰り返しになるが、理論的にはこれはうまくいくかもしれない。マスク氏はPayPalで働いで働いていた経験から、そのようなことに関して優れた洞察力を持っているはずだ。しかし、必要な承認やライセンスを全て取得するには時間が、場合によっては何年もかかるだろうし、マスク氏が思い描くような規模の決済をXが実現するようになるには、とても長い時間がかかるだろう。

 マスク氏が主要な受託機関や政府を繰り返し批判していることは、この点でマイナスに働くかもしれない。一方でXのスタッフは現在80%減少しており、開発作業の多くが比較的少数の人間に押し付けられている。

 私は、Xが2024年末までに決済推進をある程度前進させるだろうと予想しているが、それでも「全部乗せアプリ」というビジョンには程遠いだろう。

認証バッジの意味が変わってしまった

 Xは、ユーザーに青いチェックマークを購入させるばかりか、以前に検証されたプロファイルから青いチェックマークを削除するなど、認証に関しても失策を犯している。

 その結果、Xプレミアムの実質的な価値は直ちに低下した。というのも、8ドルを払う人は、Xの中の重要な人物というより、単にXを使うためにお金を払っている人として見られるようになってしまったからだ。

 確かに、Xプレミアムパッケージには、投稿の編集機能や長い投稿、長尺動画のアップロードなど、興味深いアドオン機能が幾つかある。しかし、そもそもXユーザーの80%は全く何も投稿しないのだから、大多数の人にとってXプレミアムの価値は実質ゼロに等しい。

 事実上、マスク氏は彼自身の個人的な不満のために、潜在市場の80%に対するXプレミアムのオプションの価値を消し去ったことになる。

 その結果、Xはどこかの段階で認証プログラムを見直し、より権威と価値のあるプロダクトとして再構築するよう動くだろうと私は予想している。

 月額1000ドルのビジネスサービスは、基本的に95%のブランドにとって実行不可能であり、Xが関連性を失うにつれて、その可能性は日々さらに低下している。ここでは、単純に新しい価格帯を追加したり有料ユーザーの広告露出を減らしたりするだけでなく、アプローチ全体を再考する必要があるだろう。

 Xの認証プログラムは以前のTwitter管理下で多少機能不全に陥っていた。誰がチェックマークの対象で誰が対象外かを巡って混乱が生じていたからだ。しかし、今はそれどころか大多数の人にとって全く無意味で無価値なものになってしまった。Xが有料ユーザーの利用を増やしたいのであれば、全体を変える必要があるだろう。

ソーシャルアプリというよりニュースアプリに

 ソーシャルアプリとしては、Xはそれほどうまくいっていない。しかし、ニュースアプリとしては、Xは依然として平均ダウンロード数で首位の座を占める。

 そのため、Xはリアルタイムのニュースコンテンツに焦点を当て、専用のフィードやハイライトを通じてユーザーを話題性のある会話により密接に結び付けようとしている。

 これはXの弱点とも言えるのだが、動きの速いニュースストーリーについていくことができるのは、適切なアカウントをフォローしている場合に限られる。そのため、まずはアプリ内でそれらのアカウントの素性を知っておく必要がある。

 Xは、かつて公開期間限定のショート動画投稿機能「フリート」があったアプリの上部に主要なトレンドを強調表示するか、メインの「おすすめ」フィードにトレンドニュースのハイライトをさらに追加することで、この問題に対処することを検討する可能性がある。

 あるいは、より多くの「ライブ放送」や「スペース」を露出させるようになることも考えられる。これらもまた、その場で見つけるのが困難なものだからだ。

スポーツコンテンツの統合

 以前のTwitter経営陣は、進行中のスポーツイベントに対するエンゲージメントを最大化すると同時にツイートをより効果的に紹介するために、ライブスポーツコンテンツをより適切に統合しようと何年も努力してきた。

 Xはそれと同じようなコンセプトを、ニュースやイベントを強化する取り組みの一環として再検討することになるだろう。また、スポーツコンテンツをアプリに取り込むために、より独占的な配信契約に署名する可能性もある。

 Twitterはこれにうまく対処できなかったが、新しいXチームはより良い形でそれを統合する方法を見つけるかもしれない。それによって、スポーツファンをXに引きとめ、他のプラットフォームに移行するのを防ぐことができるかもしれない。

クリエイターへの支払いに関する反発

 Xの最大のイノベーションの一つが、クリエイターがX内で投稿した魅力的なコンテンツに対して収益を得られる「クリエイター広告収益分配プログラム」だ。

 この方向に動くのは賢明だ。クリエイターに報酬が渡るようにすることが彼らを維持し続けるための鍵であることは全てのプラットフォームが認識している。だが、これまでのTwitter経営陣は、それを実現するための公平な方法を見つけるのに長い間苦労していた。

 Xはこの問題を解決したかもしれないが、そうでないかもしれない。レベニューシェアの支払いスキームはまだ不透明な部分が多い。特に、Xプレミアム加入者に表示された広告のみがプログラムの対象となるという条件が分かりにくい。

 今後、Xの広告収入シェアシステムを(エンゲージメントベイトを投稿することで)ハックしようとする人が増え、ある段階で、プロセスのアップデートの影響により広告収入シェアの支払いが大幅に減少し、クリエイターの反発が起こることを私は予想している。

 これはSnapchatや他のアプリでも実際に起こったことだが、クリエイターが不公平感を感じればプラットフォームを離れてしまう。私は、Xがこの問題に直面する次のプラットフォームになると考えている。Xがプラットフォーム自身の目標により合致するように、収益分配システムを洗練し、改善することに取り組んでいるからだ。

 プロセスの変更によって多くのクリエイターが後味の悪い思いをすれば、彼らの目は再び他のプラットフォームに向くことになるかもしれない。

 そして、影響を受ける人々の中には、声の大きなマスク氏支持層も一部含まれることになると思われる。

年半ばには倒産の警告も?

 マスク氏は過去にTwitter倒産の可能性について言及したことがある。これがどれほど深刻になるかは分からない。しかし、広告収入は依然として減少しており、サブスクリプションやその他のプロジェクトも空回りしている。加えて、買収契約の一環としてマスク氏に追加された数十億ドルの債務負担もあることから、Xは今後7カ月以内に倒産警告を出すだろうと私は考えている。

 マスク氏とXのCEOであるリンダ・ヤッカリーノ氏は、Xの業績についてバラ色のイメージを描こうと熱心に取り組んできたが、あらゆる外部分析は、物事がそれほどうまくいっていないことを示唆している。競合するMetaのThreadsは引き続き勢いを増しており、影響力のあるユーザーを引き付けているし、マスク氏は物議を醸す発言をやめない(米大統領選挙で右翼候補者との連携がさらに進むにつれ、その意見はさらに増える可能性が高い)。こうした中で、Xが主要な収益源である広告収入でどのように運命を逆転させようとしているのか、私にはさっぱり分からない。

 マスク氏は今後も「後悔しないユーザー秒数」や「累積ユーザー分数」などの新しい指標を宣伝し続けるのではないかと思う。しかし、ある段階で彼は、Xの在り方に対する彼の楽観的なビジョンが現在の路線では、少なくとも何らかの利益を上げるために必要なスピードでは実現しそうにないという真実に直面せざるを得なくなるだろう。。

 これが最終的に深刻な脅威となるかどうかは分からない。現在進行中の世界的な紛争が市場に与える広範な影響やThreadsの台頭による相対的なバランス変化などの外部要因に大きく左右されるところもあるだろう。しかし、私は、Xの実験が失敗し、2024年の今頃には完全に頓挫する可能性さえあると本気で考えている。

 本当にそうなりそうかと言えば、答えはノーだ。Xは現段階でもまだ十分な存在感を持っている。しかしXができるだけ早く、多額の収益を得る必要があるのは間違いない。そうでなければ、収益は下り坂を転がる一方になるだろう。

 マスク氏はこれまでのところ、軌道修正する素振りを見せていない。そして、それこそがXの破滅につながる可能性もある。

© Industry Dive. All rights reserved.

インフォメーション