コマース領域への進出、AI機能の強化など、2024年もTikTokはますます進化することが予想される。しかし、米中関係次第では、そもそも全面的にアプリ利用が禁止される懸念もある。
TikTokはこれまでに中国や一部のアジア地域においてインストリームショッピングで大成功を収めてきた。しかし、欧米市場でこれを軌道に乗せるのには苦労している。また、最近インドネシア当局が国際競争から地元企業を保護するために、ソーシャルアプリでの商品の販売を禁止する法律を施行したが、このことも打撃になる可能性がある。
この点を考慮すると、アプリ内でのショッピングや商品発見にまつわるユーザーの行動を再形成しようとするTikTokの取り組みには厳しい兆候が見られる。
中国版TikTokである「Douyin」はすでにフードデリバリーやローカルサービスなどの新たなコマース分野に進出しており、これらを支援すべくコンテンツフィード上でユーザーやビジネスの動画を強調している。
TikTokはここしばらく同様のことを米国でもテストしており、一部のユーザーのコンテンツフィードに「Nearby」タブを表示させている。
TikTokはユーザーの行動を拡張するさまざまな方法を見つけようとしており、この「Nearby」ストリーム内にフードデリバリーやローカルビジネスリストを組み込むことになるだろう。そのため、2024年にはこれがより大きな注力事項になると予想される。
TikTokは、インストリームショッピング拡大に向けて歯車を動かすために、価値のある大きなコマースサービスを1つ提供するだけでいいのだ。直販サービスはまだ実現していないが、こうした他の選択肢がより大きなトレンドを促進し、TikTokに新たな道を開くかもしれない。
TikTokはすでに、テキストから動画への変換ツールやAIプロファイル画像などの生成AIツールの実験を開始している。
2024年はTikTokがAIに関してさらなる進展を見せると私は予想する。これには、テキストからビデオへのツールの統合が含まれる。ユーザーは完全にAIによって生成されたビデオクリップを投稿できるようになるだろう。また、一部の市場で現在テスト中のAIチャットbot実験を拡大するはずだ。
TikTokの親会社であるByteDanceもまた、中国の数百万人のユーザーを対象に同様のチャットbotをテストしている。これにより、最終的にはTikTok内でより洗練されたバージョンのAIチャットbot体験を提供できるようになるだろう。
これまでのところ、チャットbotはソーシャルメディアアプリに革命を起こしていない。しかし、それらは機能的な目的を果たしつつユーザーをインストリームに居続けさせる。また、TikTokのトレンドにリンクしたチャットbotは、より広範なコンテンツや製品の発見を容易にし、TikTokにとって有益な追加要素となり得る。
本当に重要なのは、それを価値ある楽しい体験にすることだ。ここでもTikTokは一定の利点を持っている。なぜなら、欧米のユーザーに提供する前に、中国ですでに同様の機能を実装しているからだ。
TikTokは生成AIで大きな飛躍を遂げ、ソーシャルメディアの競合他社に差をつけ、このアプリをより価値のあるものにするだろう。
もう一つ、Douyinは最近、全てのデジタルアバター(バーチャルヒューマン)を実名認証で登録することを義務付ける新しいルールを導入した。
完全にデジタルなキャラクターがTikTokで定着したわけではない。だが、最近ではビデオゲームにおけるNPC(非プレイヤーキャラクター)の動き方を生身の人間が模倣してロボットのように振る舞う動画がトレンドになっている。これはつかの間のことで、今後は実際のロボットがスターになる可能性もある。これも、注目すべき要素の一つだ。
TikTokは米国で禁止されるのか。
この件に関してはいまだに推測の域を出ていない。TikTokの安全性や米国のユーザーデータへのアクセス性に関して、セキュリティ当局が継続的に懸念しているにもかかわらず、CFIUS(対米外国投資委員会)による審査はさまざまな政治的・規制的課題によって遅れているからだ。
しかし本当のところ、全てはやや不安定な米中関係に帰着する。その意味で、中国からの米国への攻撃的な行動がよほどエスカレートしない限り、TikTokが米国で禁止されることはないと思う。
緊張が著しくエスカレートすれば、米国のTikTok禁止につながるのは明らかだ。しかし、米国領空で中国の偵察用気球が発見されたような小さな事件でさえ、ここでのバランスを崩し、ホワイトハウスがTikTokに対して行動を起こさざるを得なくなる可能性はある。ホワイトハウスは実際にそうしたいとは思わないだろうけれど。
TikTokを禁止すること自体はどちらの国にとっても大きな打撃ではないが、TikTokユーザーにとっては、中国に対する明確な不信感を即座に示す象徴的な動きとなる。当然、中国政府はこれを喜ばないだろうし、そうなれば両国間の継続的なパートナーシップや各種の取り決めにも、広く影響を及ぼすことになる。
だから、この件は地政学的な変化に依存する。中国がウクライナ戦争においてロシアをより直接的に支援することになれば、または中国が他の紛争に介入することになれば、または台湾で自国の権威を誇示することになれば、これらは全てTikTokに影響を与える可能性がある。だが、ホワイトハウスが反応するような、より重大な理由が生まれるまでは、TikTokが全面禁止に直面することはないと思う。
ただし、米中関係は常に非常に繊細なバランスの上に成り立っているため、状況があっさり変化する可能性はある。
© Industry Dive. All rights reserved.