リテールメディアの標準化によって、複雑な広告の仕様や効果測定指標が整理され明快になることが期待されている。だが、大手が足並みをそろえるかどうかは分からない。
リテールメディアの標準化によって広告フォーマットや計測などの領域で共通の期待値が設定されることで、複雑化した問題の一部は理論上、解消する。また、早い段階で標準化を進めることで、デジタルやソーシャルメディアの厄介な歴史からこのチャネルの軌跡を差別化することにもつながるだろう。リテールメディアは旧来のメディアよりも優れたパフォーマンスを提供することを約束した。ならば、評判の観点でもそうあるべきだ。
編注:本稿は「コカ・コーラも悩む『リテールメディアへどれだけ広告予算をつぎ込むべきか』問題」の続きです。
「デジタル広告のエコシステム全体における一貫性のなさと測定基準は課題であったが、今は歴史にしがみつく必要のない崖っぷちにいる。しかし、信頼とつながりを生み出すには一貫性と継続性、透明性が必要だ」と、食料品大手Kroger傘下の分析企業84.51˚のキャラ・プラット氏は言う。
現実には、リテールメディアネットワークが適切なレベルの継続性を達成するにはまだ道半ばだというのが一般的なブランドの見方だ。また、業界ウォッチャーからは、WalmartやAmazonをはじめとする影響力のある大手リテールメディアネットワークが、標準化に署名する意義があるかどうかについて懐疑的な声が上がっている。
食料品テクノロジープラットフォームSwiftlyの最高収益責任者であるアンディ・フリードランド氏は「ソーシャルメディア分野ではSnapchat、TikTok、Instagramのようなプラットフォームが普遍的な標準化なしに運営されている。そこで私たちが見てきたように、市場で支配的な地位を占める者は、新しい業界標準に自らを合わせることへの関心が低いだろう」と語る。
IAB(米国インタラクティブ広告協会)はこの会議で、バイヤーとネットワークオーナーの両方の視点からリテールメディアに対する認識を巡る新たな調査について詳しく説明し、また、断片化されたエコシステムに統一性をもたらそうとする潮流の一環として、測定基準を公開した。
IABのワーキンググループのレポートによると、広告バイヤーの60%がネットワークパートナーとの「協力とコミュニケーション」を最大のハードルの一つと考えており、この点に関して現在の取り決めに「非常に満足している」と答えたのは10人に1人だった。その他の上位課題としては、「リテールメディアバイイングの複雑性の解決」(69%)、「測定基準の作成」(62%)、「透明性の向上」(58%)などがある。それでもIABは、リテールメディアが2023年に450億ドル、今後5年間で1070億ドルの収益を上げ、従来のテレビを追い越す勢いだと予測している。
IABの代表者たちは、リテールメディアを税金や事業コストと見なす考え方が広告主の間で広まっていることに対し、時間を割いて反論した。彼らのレポートでは、投資する最大の理由として「小売業の要請」を挙げたのは調査対象となったバイヤーの28%にすぎず、55%は「増加する視聴者へのリーチ」を挙げ、52%は「自社データの活用を挙げた」としている。
IABのインダストリーインサイト&コンテンツ戦略担当バイスプレジデントであるクリス・ブルーダル氏は、この調査結果を発表した際に、「私はこの数字には真実味があると信じている」と述べた。
とはいえ、多くの広告主がリテールメディアとの関係で一触即発の状況にあることは明らかだ。今後数カ月で、小売企業が多くの懸念に迅速に対処できるか、それとも有益な収益化の機会を逃すかが分かるだろう。
Coca-Colaでコネクテッドコマース担当ディレクターを務めるケイティ・ニール氏は「ブランドや広告主が本気で決断を下すようになると思う。投資を続けるためには、結果に焦点を当て、データに焦点を当てた考察が必要だ。そして、透明性とデータと測定が明確でなければ、取り残されるリテールメディアネットワークが出てくるだろう」と言う。
© Industry Dive. All rights reserved.