シンプルなテキスト検索からマルチメディア検索への脱皮を急ぐGoogle。検索の進化に取り残されないために、マーケターは常識をアップデートする必要がある。
Googleは2022年9月に開催の年次イベント「Search On」で、新たな検索の在り方についてさまざまなアイデアを提示している。
編注:本稿は「“TikTok対抗策”でGoogle検索が変わる 『時代遅れマーケター』にならないためには?」の続きです。
主流のテキスト検索の強化施策としては、一般的なクエリからその人が興味を持ちそうなものを予測する機能の追加を発表した。そのサンプルとして紹介したのが、メキシコへの家族旅行を計画している人の検索の流れをまとめた動画だ。紹介動画では、ユーザーが検索窓にテキストを途中まで入力するとそこから予測された文章がサジェストされていた。ユーザーがサジェストされた文章から「メキシコで家族連れに最適な都市」を選ぶと、「オアハカ」をはじめとするお薦めの都市リストが表示された。ユーザーが特定の都市名をクリックすると、単純な地図や静止画像だけでなく、その都市に関連するユーザー生成コンテンツをといった関連情報を閲覧できるようになっていた。
食品分野では、特定の料理を食べたいと思う消費者が食べられるお店を探しやすくなる機能を紹介した。従来消費者が特定の料理を食べたいと思ったとき、レストランを検索してから各店舗のメニューを一つ一つ見て食べたいものが食べられるかどうかを調べるケースが一般的だった。新しい機能では食べたい料理の名前を使って、それを提供する近隣のレストランを検索できるようになる。Googleはデジタルメニューのナビゲーションを分かりやすくし、より多くの情報を提供する計画だ。単純な星評価だけでなく、レストランの雰囲気やインテリアの写真、より没入感のあるGoogle マップビューなど、深く詳細なレストランの情報を提供しようとしている。
Googleの食品領域担当のディレクター兼ゼネラルマネジャーであるソフィア・リン氏は、Serch On開催前のインタビューで「私たちの中にはレストランを検索する際に店名を入力するといった方法でWebを利用して育った人もいる。だが、これからの世代のユーザーも同じように使うとは限らない」と述べている。
GoogleはWeb検索を深掘りするための手段として、2022年初めに導入した「マルチサーチ」を紹介した。ユーザーがテキストと画像を同時にクエリとして適用して検索できる機能だ。マルチサーチで画像と「near me」という言葉を組み合わせて検索することで、ユーザーが探しているものがある近隣の場所を特定できるようになった。マルチサーチにロケーションベースの情報を追加した形で、英語による検索において2022年秋以降、広く利用できるようになる予定だ。
「私たちは非常に長い間、食について研究してきた。レストランは何年も前から最も多く寄せられるクエリの一つだ」とリン氏は言う。「これまでと違うのは、機械学習やマルチタスクが進化していることだ。私たちが本当に注目していたのは、『いかにしてテクノロジーを駆使してレストラン探しを簡単にできるか』ということだ」(同氏)
Googleは、Google検索におけるショッピング機能も拡充した。追加する機能は以下の通りだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行で小売業者のデジタルへの移行やオムニチャネル戦略が加速した。Googleのショッピングに関する新しい検索機能の開発は、こうした変化を望む小売業者からGoogleがより多くの関心を集められる可能性を物語っている。
Googleは、旧来の検索機能を刷新しようと試行錯誤している。同社は幾つかの主要なビジネスにおいて逆風にさらされている。動画共有サービスの「YouTube」はマンネリ化しており、「YouTube Shorts」と呼ばれるTikTokに似た新しいフォーマットに多額の投資をしている。検索は依然としてGoogleの最大の収益源であり、2022年第2四半期(2022年7〜9月)には約406億9000万ドルを計上したが、厳しいマクロ経済環境と競争激化の中で広告の伸びは一般的に鈍化している。
TikTokの他にも、消費者は情報を探すためにGoogle以外のサイトを利用するようになっている。これはGoogleにとって長期的な問題となり得る。Amazon.comはオンラインショッピングの主要拠点だ。広告事業にも積極的に進出し、Googleへの対抗心を高めている。コミュニティー主導の深い議論を求める消費者は大手オンラインコミュニティーサイト「Reddit」のようなサイトに依存することもある。これはGoogle検索に対する潜在的な不満の表れである可能性がある。
今回のSearch OnでGoogleは、検索結果一覧に「ニュース」や「画像」といった既存カテゴリーと並んで表示される新しいカテゴリー「ディスカッションとフォーラム」を発表した。
「成長する競合他社よりGoogleが常に先を行っていることは間違いない。ITの進歩の速さを考えると、それができなければ主要な検索エンジンであり続けることはできなかっただろう」とドロス氏は言う。
© Industry Dive. All rights reserved.