連載
» 2020年07月17日 09時00分 公開

うんこミュージアム仕掛け人が語る コンテンツ戦略の経営ビジョンへの回帰――カヤック阿部晶人氏withコロナ時代の「デジタルプレゼンス」を語ろう 第2回(2/2 ページ)

[安部知雄,サイトコア]
前のページへ 1|2       

面白くあり続けるためには自分自身が面白がれ

松永 今の話を聞いて、カヤックに就職したい学生が多い、人気の高さの秘密がわかったような気がします。そうは言っても「面白法人」であり続けることは難しい。どうすれば達成できるのでしょうか。

阿部 シンプルに「自分自身が面白がっているか」ですね。その姿勢が保てていれば大丈夫で、僕以外の社員もそんな人ばかりです。必ずしもコミュニケーションを得意としているわけではないのに、面白いアイデアを出す人もいて、ブレインストーミングからお互いに刺激をもらい、お互いに成長しようとするのがカヤックの文化です。

松永 会社にやることを決められてしまうと、それに引っ張られてしまうことがありますが、自分たちが楽しんでいるのであれば軸がぶれることはありません。それでこそ本当の面白法人だと思います。社員が楽しむカルチャーを持つカヤックのコンテンツ戦略についても聞かせてください。これからの企業はどうすべきか。今の組織でいいのか。カヤックとの付き合い方も含めて聞きたいです。

阿部 カヤックは徹底的にコンテンツにする会社です。先ほど「人がコンテンツ」という話をしたように、あらゆることをコンテンツ化する執念を持っていると思います。例えば、退職した人へのインタビューをコンテンツ化するのもカヤックに興味がある人たち向けに行っていることです。なので、他の企業でも実は社内にはコンテンツにできる材料はたくさんあるのに、気付いていないだけかもしれません。あるきっかけで気付くこともあるでしょう。コンテンツ化に長けた「コンテンツオペレーションオフィサー」がいれば変われるのかもしれません。

松永 なるほど。私は「変が面白い」という世界あってもいいと思っているのですが、これからどんな人がコンテンツの責任者になるべきだと思いますか。もちろんいろいろな性格の人がいますが、阿部さんが一緒に仕事をする人はどんな人であってほしいと思いますか。

阿部 ビジョンの話に共通しますが、その会社の人格を考えている人ですね。最近もてはやされるのが、ビジョン寄りではなくどちらかというとSNS寄りの人なのが残念です。それはそれで面白いのですが、もっと企業のことを深掘りできて、何を言うべきかに立ち戻って考えられる人がいなければ、横並びのものが増えるだけだと思います。

松永 そうですね。ウケ狙いが行き過ぎるとお客さまは気持ちが悪い。阿部さんの話にあったように、やわらかくもないし、あたたかくもない。少し先のことを聞いておきたいのですが、これからどんなチャレンジをされていくつもりですか。

阿部 クリエイティブディレクションを手掛けた「うんこミュージアム」がお休みということもあり(※)、次にやることを考えている最中ですが、鎌倉と共に会社がどう育つかに関心を持っています。会社としても「カマコン」という鎌倉を盛り上げたい人たちをITで支援する組織に参加したり、主力のソーシャルゲームよりライトなものを作り始めたり、時代に合わせた事業を作っています。

松永 さっきの話に出てきた「コンテンツ化する執念」に関連して、もう少し詳しく聞きたいことがあります。その会社のことを何も知らない人たち、ある程度興味を持っている人たち、熱心なファンという興味の度合いが全く違う人たちがいたとしましょう。それぞれの違いを意識しないと、コンテンツをむやみにたくさん作っても難しいですよね。「こんな層に対して、こんなコミュニケーションをしたい」という相談をもらうことはありますか。

阿部 ありますね。クライアント側に「こうしたい」というプランがない場合もありますが、基本的にクリエイティブ制作では誰に何を提供するかが前提ですから、ない場合はこちらから確認してから制作を行います。それは先ほど話した誠実さにもつながることです。

松永 この時期だからこそ企業が出すべきメッセージがあれば、出すべきでないメッセージもあると思います。最後に今どんなクリエイティブが求められているかを聞かせてください。

阿部 みんながイライラしているときは、慎重に情報発信をすべきです。次に正しい情報を発信すること。さらにその次にユーモアがあって楽しい情報を発信する時期がやってきます。根本にあるのは企業の人格なので、真面目な会社がいきなり変なことをやると当惑される可能性がありますが、そろそろ総体として幸せな気持ちになること、笑顔になることをやる時期だと思います。

※2020年6月19日に営業再開。

今こそ原点に立ち、経営ビジョンに即したコンテンツの提供を

前回の得丸氏に続き、今回の阿部氏も、この未曾有の時代を企業変革のチャンスであると捉えていることが分かります。個人のライフスタイルが変われば、企業も変わらなくてはなりません。コロナ禍で先行き不透明な今だからこそどんなメッセージを出すべきかを考える良い機会だと思います。対談中に出てきた「面白い」はあくまでもカヤックという企業の人格であり、企業はそれぞれユニークな人格を持っているはずです。経営ビジョンというと、今までは形だけのものと考えていたかもしれませんが、原点に立ち戻り、誰のために何をしたいのかを明確にすることが求められています。それは今後のコンテンツ戦略を考える上で不可欠なことだと思います。今、私たちはそのスタートラインに立っているのです。

執筆者紹介

安部知雄
サイトコア執行役員 シニアマーケティングディレクター。国内大手鉄鋼メーカーで世界各国への機械販売に従事。世界市場におけるマーケティング力やコミュニケーション力の重要性を再認識し、マーケティングコミュニケーションエージェンシーへと転職。外資系企業の日本参入を多数支援し、クリックテック・ジャパン立ち上げにも携わる。2016年5月サイトコア入社。2019年9月より現職。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.