連載
» 2020年07月17日 09時00分 公開

withコロナ時代の「デジタルプレゼンス」を語ろう 第2回:うんこミュージアム仕掛け人が語る コンテンツ戦略の経営ビジョンへの回帰――カヤック阿部晶人氏 (1/2)

これからの企業に求められる「デジタルプレゼンス」について識者と語るこの連載。第2回は「うんこミュージアム」を手掛けたクリエイティブディレクターの阿部晶人氏をゲストに迎え、これからのコンテンツ戦略について聞きました。

[安部知雄,サイトコア]

 こんにちは、サイトコアの安部です。

 私たちのライフスタイルはコロナ禍で大きく変化しました。これからに向けてデジタル戦略の見直しも必要ですが、顧客体験の向上ではパーソナライズしたコンテンツを提供することの重要性が高まっています。多くのマーケターが日々実感していることではありますが、質と量の両方を担保したコンテンツを準備することは容易なことではありません。ですが、顧客を引き付けるコンテンツのネタは社内に必ずあります。

 この連載では「デジタルプレゼンスの再考」をテーマに、DX(デジタルトランスフォーメーション)のパイオニアとして知られる松永エリック匡史が各回のキーパーソンと語り合います。第2回は、日本を代表するコンテンツクリエイターである面白法人カヤックの阿部晶人氏をお迎えし、「デジタルプレゼンスを高めるためのコンテンツ戦略」をテーマに話を聞きました。

お客さまとのつながり再考の機会

阿部晶人氏 面白法人カヤック企画部ディレクター。電通、Ogilvyなどをへて現職。

阿部 カヤックは鎌倉に本社を置くITベンチャーで、大きく2つの事業を展開しています。1つが企業の依頼を受け、プロモーション企画を考える事業で、もう1つがソーシャルゲームの事業です。さらに最近では、地域活性化の事業にも取り組んでいます。カヤックは社名に「面白法人」とあるように、面白いことを仕掛けたいという気持ちにこだわりがある会社です。また「人がコンテンツ」という信念が、社員一人一人の個性を伸ばしながら良いものを作る文化の醸成につながっていると思います。

松永 afterコロナの時代は、組織ではなく個人が前に出る時代になるべきと思っていて、「人がコンテンツ」という話は興味深いです。非常事態宣言中は皆が家にいたわけですが、会社やクライアントの変化で気づいたことはありますか。

阿部 カヤックとしては、都心にある会社とのオンライン会議は今までも当たり前のようにやっていたことですが、会わなければできないと思っていたことが変わるので、今はいろいろなことを再考する時期だと思います。例えば、カヤックが鎌倉にあるように、都心から郊外へ移転する会社が出てきて、働き方も変わるかもしれません。今は毎日状況が変わるので、意思決定のプロセスを早くすることも必要だと思います。

松永 クライアントの視点に立ったとき、マーケティング活動でどんな変化が起きていると思いますか。

阿部 クライアントとのつながり方を考え直す必要性を感じていますし、お客さまとの絆の作り方をもう一度考え直すことを目的にカヤックに相談いただくクライアントが増えてきました。キーワードとしては「リビングエンタテインメント」があります。商品やサービスなどを通じて、お客さまと同じソファに座れる間柄になるには、本質的にお客さまにとって今必要なコンテンツであるかが大切になります。皆が家にいる時間が増えたからこそ、どうやって豊かな時間を過ごそうと考えるようになったのだと思います。

企業のデジタルプレゼンスの成否を左右すること

松永エリック匡史氏 アバナード デジタル最高顧問。青山学院大学 地球社会共生学部 教授。

松永 世界的にこれほど多くの人たちが家にこもっている時代はありません。その意味でデジタルプレゼンスの重要性が急速に高まっていると感じます。阿部さんから見て「デジタルプレゼンスはこうあるべき」と思うことはどのようなことですか。

阿部 カヤックとしてはデジタルの知見があるので、意思決定が遅くてまだ動けていない会社のお手伝いをしたいという気持ちがあります。僕自身がどう動くかという意味では、選ばれる会社や商品になるための手法として、意味のあるデジタルコンテンツを提供しないといけないと考えています。それは、企業のビジョンに立ち戻ることと同じです。自社がお客さまに何ができるかを考えたとき、商品を売りたいではなく、商品を通して何をお客さまに提供したいか。今はお客さまとどうつながるかを問い直す時期だと考えています。

松永 Webサイトは会社の顔であるのに、経営ビジョンとリンクできていないのは問題です。自社のWebサイトをあまり見たことのないCEOが日本には結構いるんですよ。デジタルプレゼンスは経営に直結していることを訴えないといけません。

阿部 まさにその通りだと思います。ビジョンは会社の人格のようなもの。カヤックの場合は「面白法人」で、会社自体が面白い人の総体であるのと同様に、それぞれの会社がはっきりと人格を作り込まないと、戦略のない打ち出し方になり、お客さまとの絆を持てなくなると思います。

松永 客観的に考えて、デジタルで勝つ企業とそうではない企業を分けるのは何だと思いますか。

阿部 誠実さではないでしょうか。背伸びをせずに、ありのままを素直に見せる方がデジタルでは受け入れられやすいと思います。僕自身はカヤックへの入社前から「やわらかく」「あたたかく」「ちょうど良く」の3つを大事にしています。「やわらかく」は柔軟性の意味もありますが、今のような難しい時期でも相手の想像を超えたアイデアを出せることを含むと考えると、カヤックの価値観との親和性が高い言葉だと思います。「あたたかく」は血の通ったコミュニケーションですね。ともすると冷たい印象のあるデジタルですが、裏側にいる人の真心が感じられるようにすることを心掛けています。最後の「ちょうど良く」はやりすぎないこと、そしてちょうど良い距離感でお客さまと向き合うことです。「リビングエンタテインメント」もですが、心地よい感覚を考えてコンテンツを作り、それがうまくいくと、バズにつながることが多いです。一口に「面白いこと」と言っても、バズ狙いだけではなく、ゆくゆくは企業のブランドになるアイデアを意識してプランナーは仕事をしているのです。

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