オンラインアンケートを軸にしたXM(エクスペリエンスマネジメント)プラットフォームを提供するQualtricsは、世界17の国と地域で雇用されている18歳以上の男女1万3551人(フルタイム84%、パートタイム16%)を対象に「従業員のエンゲージメント」に関するアンケート調査を実施しました。全回答のうち500件は日本から収集されています。
Qualtricsが定義するXMとは、CX(顧客体験)のみならず、エンドユーザーやパートナー、サプライヤー、投資家、従業員、その他一般市民に至るまで、あらゆるステークホルダーに対して組織が提供する体験を向上させる取り組みを指します。同社では「顧客」「従業員」「ブランド」「プロダクト」の4分野の体験向上をサポートする製品を提供しています。
今回の調査はそのうちEX(従業員体験)にフォーカスし、職場での体験が従業員エンゲージメント(職場に誇りや愛着を持って自発的に行動しようとする姿勢)にどう影響を及ぼしているかを探りました。調査の結果、世界の従業員エンゲージメントの平均が53%であるのに対して日本は35%で、今回の調査対象国・地域の中では一番低いことが分かりました。
日本人は一般的に中庸な選択肢を選びがちな国民性があるとされています。単純な国別比較をする際にはその点を考慮する必要はあります。しかし、Qualtrics日本法人のクアルトリクスで同調査の日本版の結果を取りまとめた市川幹人氏(EXソリューションストラテジーディレクター)は「35%という数字は他国と比べて圧倒的に低い。従業員エンゲージメントが弱い事実は否定できない」と語っています。
では、どうすれば従業員エンゲージメントを向上させられるのか。どのような要因が従業員エンゲージメントにインパクトを与えているのか。日本における要因を重回帰分析で調べたところ、以下の6項目が上位に挙がりました(重要度順、%の数字は肯定的回答率)。
市川氏は今回の調査結果から分かった3つのトレンドを紹介しました。
従業員エンゲージメントを維持・向上させるために従業員からのフィードバックプログラムを設けている企業の回答者は、エンゲージメントスコアが44%と高い水準にあることが分かりました(フィードバックプログラムを設けていない企業の回答者は31%)。また、日々の変革を実感している従業員に関しては、四半期に1度以上の頻度でフィードバックを求められる企業の回答者のエンゲージメントスコアが58%で、年に1、2度のフィードバックしか求められない企業の回答者のエンゲージメントスコア(40%)を上回りました。
フィードバックを基に企業が実際に行動を起こしているか否かによって、エンゲージメントスコアはより大きく異なります。フィードバックをうまく活用している企業の回答者のエンゲージメントスコアは71%であるのに対し、活用できていない企業の回答者のエンゲージメントスコアは30%にとどまりました。「ただ従業員の声を聞くだけでなくアクションを取る。全部できるわけではなくても、確実にできることを実行することでエンゲージメントの度合いは変わってくる」と市川氏は語ります。
同調査では、日本において平均的な企業は2年ごとに人材の約3分の1が離職する可能性があることが示されました。現在の職場にとどまろうとしている期間が1年未満とした回答者は11%、2年未満は21%でした。リクルーティングや育成にかかるコストを考えれば定着率を高めることは不可欠です。市川氏は従業員エクスペリエンスの実態を数値で把握し、管理することがエンゲージメントスコア向上の鍵であり、そのために「マネジャー層の育成と成長機会の拡充が必要」とまとめています。
エクスぺリエンスというと主にCXばかりが注目されますが、顧客に最高の体験を提供するのは従業員です。CXの大前提としてEXへの取り組みは欠かせません。
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