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» 2019年11月21日 18時00分 公開

初めてのセールスイネーブルメント:日本で取り組むセールスイネーブルメントと今後の展望

セールスイネーブルメントの概念や代表的なツールについて2回にわたって紹介してきました。最終回となる今回は、日本で取り組むセールスイネーブルメントと今後の展望について述べます。

[内田雅人,イノベーション]

 第1回でも少し触れましたが、セールスイネーブルメントが話題になり始めた背景の1つに「営業リソースの不足」があります。

 マーケティング活動のデジタル化が進んだことで営業パーソンがフォローすべき見込み客は急速に増加しました。一方で日本では今日、労働人口減少という課題を抱えており、どこの企業でも増員が難しくなっています。

 現状の営業リソースで最大の成果を上げるため、各営業パーソンのスキル向上と業務の平準化が急務となりました。属人化しがちなセールス活動をチーム全体で向上させていくことが必要になったのです。これは、主に管理をすることに比重を置いている従来のSFA/CRMのような営業支援ツールだけでは実現できない部分です。

セールスイネーブルメントに取り組むための「5つの心得」

 セールスイネーブルメントは、サービス知識や商談トーク、営業資料などのナレッジ共有と改善を通じて、組織として営業力を向上させようというものです。具体的にセールスイネーブルメントに取り組む上で知っておきたいポイントを、以下に「5つの心得」としてまとめました。

1. プロジェクト(チーム)を立ち上げる

 一般的に、セールスイネーブルメントは営業部門だけでなく他部門を巻き込む必要があります。営業メンバーを中心に、各部門の内情に詳しいメンバーでプロジェクトを組むことで事前にコンセンサスが取れ、物事がスムーズに進みます。現在の業務の見直しや再設計など、一時的に業務が膨れ上がる可能性があるので、なるべく専任の担当者(オーナー)を置くことが望ましいでしょう。

2. 現状の課題は数字で語る

 定性的になりがちな課題を定量的に表す必要があります。まずは自社の営業部門が目指すゴールを策定します。セールスイネーブルメントの目的は各営業改善施策がうまく機能し、成果に結び付くようにすることです。明確で定量的なゴールを設定し、現状とゴールの差異を課題として洗い出します。その課題についてそれぞれKPIを設定することで、課題に対する進捗を可視化できます。例えば「新規の案件獲得数を増やせていない」という課題があるとします。目指すゴールを新規案件獲得月10件とすると、現状の過去実績が月7件であれば、課題は「新規案件獲得数-3件」となります。これをKPIに落とし込むのであれば、「商談数を●●件確保する」「受注率を●●%向上させる」となり、さらにブレークダウンすると、「問い合わせ数を●●件増やす」や「アポイント獲得率を●●%向上させる」というのがKPIとなります。

現状とゴールの差異を洗い出す《クリックで拡大》

3. 数値の計測方法を吟味する

 設定したKPIを達成するためにはどのような数値をどのようなタイミングで取得し、可視化するかを事前に決めておく必要があります。例えば、アポイント獲得率を向上させるというKPIを達成するためには、「各営業パーソンの架電数」や「アポイントの獲得数」を正確に把握する必要があります。あるいは、受注率を向上させるというKPIであれば商談数や受注数を把握することに加え、「どの営業資料がどれくらい活用されているのか」を把握することで営業ツールを含めたブラッシュアップが可能になります。

4. 適切なツールを使いこなせ

 KPIに対しての進捗(しんちょく)を可視化するためには、データの収集が必要です。数値の把握が十分にできない場合や、PDCAを適切に回すことができない場合には前回紹介したツールの導入なども検討してください。ツールを取り入れ一連の流れを何度も繰り返していくことで、理想の営業組織を作ることができるのです。

5. 的確な実行と振り返りを繰り返す

 データ計測の体制を整えたら、施策を実行しましょう。各施策の結果をKPIと比較し、大きく乖離(かいり)しているようであれば、施策の見直しも必要です。改善施策は企業様によってまちまちですし、万能の解はありません。営業コンテンツを大幅に変更する必要があるかもしれません。営業トークや管理スキームを改善する必要が出てくることもあります。活動の量、活動の質、時間、阻害要素などを数値化し、数式を使って営業活動を戦略的に管理し、PDCAを適切に回すことが何よりも大切です。

今後の展望

 アイ・ティ・アールが日本国内における、セールスイネーブルメントツールの市場予測を発表しています。この予測によると、2022年度までの年平均成長率(CAGR)は17.2%とされています。これは、今よりも多くの企業がセールスイネーブルメントに取り組み始めるということを示しています。

《クリックで拡大》

 日本国内の法人営業には、まだまだ無駄や非効率が存在しています。テクノロジーの発展により、さまざまなソリューションが生み出されていますが、それを使いこなせるかどうか、成果を生み出せるかどうかは使い手に掛かっています。

 SFAやMAなどのツールはツールでしかありません。ぜひ「営業プロセス全体を一貫して施策設計/管理し、トータルで最適化をする」活動を進めていただければと思います。

寄稿者紹介

内田雅人

うちだ・まさと イノベーション セールスクラウドユニット ユニット長。2010年にイノベーション入社。IT企業を中心に営業戦略の立案やWebマーケティングのコンサルティングを担当。2016年よりイントレプレナーとして新規事業創出をミッションに活動。現在、マーケティングオートメーションツール「List Finder」の事業責任者を担当。


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