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» 2019年03月19日 07時00分 公開

AIが変える接客:パルコが進めるリアル店舗の顧客行動分析、セレンディピティーを呼ぶ「DAPCサイクル」とは (1/2)

店舗のデジタル化で顧客体験はどう変わるのか。そして、その先に待つショッピングセンターの新たな提供価値とは何か。

[冨永裕子,ITmedia マーケティング]

 「24時間PARCO」を掲げるパルコは、顧客とテナントショップの販売員がいつでもどこでもコミュニケーションのできる「オムニチャネルプラットフォーム」の整備に取り組んできた。

 店頭の施策としてはPARCOカードや接客研修、デジタルの施策としてはショップ販売員が自由に使えるショップブログ、スマートフォンアプリの「POCKET PARCO」などがある。販売員にこれらの仕組みを使ってもらうことで、接客の質の向上を進めてきた。

 とはいえ、課題も残されていた。特に大きいのが、アプリを使わない買い物客の店舗内行動を把握ができないことだ。Webサイトの行動ログを分析するのと同じようにリアルの店舗でも来店客の行動を分析できないか――。この長年の課題を解決するきっかけとなったのが、AIプラットフォーム「ABEJA Platform」を基にした小売店舗向けの来店客解析サービス「ABEJA Insight for Retail」だ。

 本稿では、2019年3月にABEJAが開催した年次イベント「SIX 2019」に登壇したパルコ執行役の林 直孝氏(グループICT戦略室担当)の講演から、一連の取り組みの詳細を紹介する。

来店客解析を実施する意義

パルコの林 直孝氏 パルコの林 直孝氏

 ABEJA Insight for Retailが導入されたのは、2017年11月に旧松坂屋上野店南館の後の新ビルに入居した「PARCO_ya上野」だ。来店客の人数カウントと属性を判定するため、テナントの区画ごとに200台以上のカメラを設置し、時系列で男女別、推定年代別の来店客データを収集することにした。このデータはショップごとの売り上げと照合し、そのショップの来店客の「買い上げ率」の時間帯別推移をダッシュボードで見られるようにしている。

 ABEJA Insight for Retail導入から数カ月後、ダッシュボードを各ショップの接客の質を高めるために使ってもらおうと、林氏らは、繁忙期が過ぎたころにショップ店長を集めて、ダッシュボード活用のための説明会を行った。その際に説明したポイントは以下の2つだ。

  • 自分のショップへの時間帯別の来店傾向を把握してもらうこと
  • 時間帯別の来店客の属性を把握すること

 来店客の多い時間帯を把握できれば、シフトや休憩時間を調整し、店員が足りないことで起きる機会損失を減らせる。また、来店客の属性によって人目に付きやすい場所のディスプレイを小まめに変えることで、買い上げ率を高めることも期待できる。柔軟性や即時性で及ばないものの、リソース配分を最適化して運用の効率化やマッチングの精度向上を図ろうという点はデジタルの手法に近い。

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